ちびねこグルのぼうけん

ちびねこグルのぼうけん

ぼくはねこのグル。赤い大きな納屋で生まれた。毛なみは灰色で、前足とあごの下にはちょっぴり黄色の毛もまじっている。しっぽはみじかい。母さんは、こんなに上品なかっこうをしたしっぽはめったにないというけれど、長いしっぽがほしいよう。

ある日、ぼくは、母さんや兄さん、姉さんたちと別れて、よその家にもらわれていくことになった。人間はねこの話すことばがわからないらしいんだけど、うまくやれるだろうか。うちにもどされたら、かっこうわるいな……。

ちびねこグルの、ひとりっきりのゆかいな大ぼうけんが始まった。

◎とっちゃまんのここに注目!

ちょっとボリュームがあるけど、一気に読めるね。おもしろい本だ。

主人公はちびねこのグル。もらわれて行った先でのできごとを通じて、グルが成長していくすがたがえがかれているから、どんなできごとがあって、それがどうグルにえいきょうして、どうなっていったかということを、おさえたいね。グルの成長がこのストーリーのホネになっているからね。

・「ちっくしょう!」

考えるキーワードをあげてみるね。一つは「ちっくしょう!」。これ、ボクもよく言う。らんぼうなことばかもしれないけれど、人間として、とても大事。だって、ボクたちは、くやしさや悲しさやせつなさをバネにして、かいだんを一だん一だん上がっていくものだから。

グルはやわなヤツじゃない。かなりたくましい。あまえんぼうでもない。

たった一人で道を切り開いていこうというヤツだ。そんなグルが、何度も「ちっくしょう!」って言うね。グルが、どんなとき、どんな場面で、何に対して言っているか、読みとってみよう。そこから、グルの性格や考え方、生き方のようなものが見えてくるんじゃないかな。

もらわれていくグルの身に、きみ自身をおきかえてみるといいかもしれない。「自分ひとりきり」ということを想像してみよう。そうすると、グルの「ちっくしょう!」が、気持ちにせまってくるだろう。これ、この本のテーマに通じる方法だよ。

・ことばが通じるということ

もう一つのテーマは、「ことばが通じる」ということ。グルは人間のことばをわかっているけど、グルのことばは人間には通じない。通じるのは、となりのピーターとスミスのおじいさんだけだ。どうして?ヒントはグルのこんなせりふ。

「うんと、うんと小さい子どもと、うんと、うんと年をとった人間は、ほかのひとたちより、ものごとが、なんでもよくわかるんだ」

どうしてなんだ?子どもと老人にはわかって、ふつうの大人たちにはわからないものって何だろう?これ、なぞときのしがいがあると思う。

さて。きみのことばは、人に通じているだろうか。きみは人のことばをわかろうとしているだろうか。あったりまえさ、などと言ってはいけない。伝えようとしなければ、何も伝わらない。わかろうとしなければ、何もわからない。

この本を通して、きみに考えてみてほしいことだよ。

・感想文のテク二ック

ボクがすすめたいのは、ねこになりきって書くこと。たとえば、グルの友だちのねこになったつもりで、『吾輩は猫である』の主人公のように、グルや登場人物のことを語ってみたらどうかな。ちょっとした冒険だけど、かなりおもしろい感想文ができると思う

 

 

※上記の著作権は宮川俊彦にあります。
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※出典:読書感想文おたすけブック(2004年)

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ちびねこグルのぼうけん 

アン・ピートリ・作 古川博巳・黒沢優子・訳

大社玲子・絵 / 福音館書店