よみがえれ、えりもの森

よみがえれ、えりもの森

えりも砂漠――。 開発によって海岸ぞいの広大な森を失い、砂漠化してしまった北海道日高地方のえりもの町は、かつて、そう呼ばれていた。

木を切られたはげ山の赤土がまい上がる。風が土を海に運び、雨は海にどろ水を流す。海は沖まで赤くにごって、魚もよりつかない。宝のコンブはどろコンブになってしまった。このままではダメだ。自分たちの手で海をよみがえらせなければ――。漁師たちが立ち上がった。

五十年という年月をかけて、ふるさとの森と海とをとり戻してきた人たちの、

長くかけがえのない記録。

◎とっちゃまんのここに注目!

えりもの実態を知らなかったから、「そうだったのか!」と思った。貴重なレポートをもらった気がする。この本、よくある自然保護モノとはちがって、「きれいごと」で終わっていないところがいい。りくつだけを言うのではなく、実態を示している。こういうレポートは大切。この本自体も、歴史の貴重な資料になっていくんじゃないかな。

森を切って、開拓していったら、海も死んでしまった。コンブもとれなくなった。そうやって自然が連関しているんだということもよくわかるね。

なるほどと思うことがいっぱい。海からのおくりものであるゴタによって、土が再生していくこと。森ができるとそこに動物がやってくること。圧巻なのは流氷。流氷の力で海の底や岩がきれいになるという。

しかも、ひとつひとつの事実が、新鮮に伝えられる。かつて『木を植えた男』を読んだときの感動がよみがえったよ。日本のさいはてにもブフィエ氏はいるんだね。

・もしもだれも何もしなかったら?

ちょっと意地悪な見方もしてみよう。もし、だれも何もせずに、何百年、何千年がすぎたら、えりもはどうなっていくだろう?ボクは、人がいなくなったあと、また太古の昔の自然がもどってくるんじゃないかと思うんだ。

コンブがとれなくなり、人はそのままでは生きていけなくなった。だから人が生きられるようにするために、森をとりもどし、コンブをとり返した。これは、べつの見方をすれば、人の手による自然の復元、開発とも言える。ただ、今までとはちがう方法をとっただけだ。

もちろん、この自然開発は、人間にも、海にも、自然にもいいことだろう。えりもの人々はこの先もずっと自然を守り育てて、管理していくだろう。これが人間と自然とのいい関係ということだろうか?――そうなんだろうな、きっと。

しかし、さらに加えて、きみのするどい意見がほしいところだ。えりもにかぎらず、日本で、世界中で、自然の破壊、そして保護や復元が行われている。植林をしたり、魚がいなくなった港をもとにもどしたり。そして、みんなが正しいことをしていると思っている。こういう時には、あえて疑問をもって問い直すことが大切だ。ほんとうにこれでいいのか?と。

・感想文のポイントは?

感想文としては、まず、人の努力をきちんと評価し、尊敬したい。頭が下がるよね。そして、さらにもう一歩。「もしだれも何もしなかったら?」「人がいなかったら」というような、いろんな疑問をもって切りこみたい。

いいか、「自然保護はすばらしい」「えらい」だけじゃ、金太郎アメ作文になってしまうぞ。人とちがうことを書くことに、表現の意味があるんだ。環境、自然のあらゆる問題をぶつけて問い直してみよう。チャレンジ!

 

 

※上記の著作権は宮川俊彦にあります。
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※出典:読書感想文おたすけブック(2004年)

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よみがえれ、えりもの森

本木洋子・文 高田三郎・絵 / 新日本出版社