こんにちはアグネス先生 アラスカの小さな学校で

あたし、ブレッドはアラスカの小さな学校に通っている。この村に学校ができたのは、あたしが六才のときだった。あれから何人も何人も先生が代わった。村に来てまもない先生も、すぐに学校を去ってしまう。もうこの学校には、だれも教えに来てくれないのかもしれない……。

そんなとき、新しい先生がやってきた。こんどの先生は、今までの先生とはちょつとちがう。「年季が入っていて」、「イングリッシュ」で。名前は、アグネス・サタフィールド。あくる朝、学校はきらきら光って、今までとはまるでちがって見えた。前とは何もかもがちがう感じ……。

アラスカに暮らす、小さな学校の十二人の生徒たちにとって、忘れることのできない日日が始まった。

◎とっちゃまんのここに注目!

作者はアラスカの小学校で三十年以上先生をしていたんだって。きっと実際の体験も混じっているよね。だからか、ほのぼのとしていて、寒い国の話なのに、温かい。アラスカというアメリカの北の州がとっても近くに感じられた。

さてさて、生徒十二人の小さな学校と、そこにやってきたアグネス先生。よくあるハチャメチャ先生のストーリーかと思ったら、とんでもない。

どこか幸せな感じが本全体にあふれていて、「ほんとうの勉強って何だろう」、「生きるって何だろう」ということを静かに問いかけてくれる。

この学校の子どもたちの場合、生きること、生活することが、勉強に優先する。きみのレベルからすれば、簡単な勉強をしているように見えるだろうけれど、みんな真剣だし、楽しそうだし、夢中になっているよね。そういうところに目を向けてみよう。

いったい勉強とは何だろう。人はどうして勉強するんだろう。何を学ぶのだろう。そういうことについて、じっくり考えようよ。日本の、どんどん知識をつめこんでいけばいいという勉強や、勉強さえしていればオーケーという環境にどっぷりつかっている子どもたちと比べてみるといいと思う。

ふつうであればいい?

子どもたちには、それぞれ特性がある。得意なことがあるといったらいいかな。読むのがうまい子、字が上手な子、運動が得意な子……。つまり、それぞれが何かを持っている、どこかでカを発揮している、かがやいているということがえがかれているんだよね。これはきみにも真剣に追求してもらいたいテーマだな。

きみには何がある?クラスではどうだろう?学校では、行事や科目を通して目立つ力のある子たちがうかび上がって見える。でも、そうではない子もいる。そういう場合、どうしたらいいんだろう?

きびしい意見かもしれないけれど、自分でなんとかしていくしかないようにも思う。「人と同じでいい」、「ふつうであればいい」では、まずいよね。十二人の子どもたちのように、わくわくすることを見つけられたらいいな。

・先生は何を変えた?

本を読むこと、文を書くこと、考えること、世界地図、年表、手話……。学ぶって、楽しいことなんだよね。

そして、アグネス先生は子どもたちの生きる窓を開いた。その窓は世界に向かって開いている。

では、アグネス先生は何を運んできて、何を変えたか?先生は生徒たちだけではなく、村の人たちにも変化をもたらしているよね。これ、チェックしておきたいポイントだよ。

感想文を書くときは、「何が変わったか」というようにテーマや切り口を決めて読みこむといいと思う。

それから、世界地図でアラスカをチェック。訳者がしょうかいしている星野道夫さんの本や写真集、シドニー・ハンチントンの自伝『熱きアラスカ魂』など、アラスカについての本を探して読んでみるのもいい。氷河にオーロラ、マッキンリーにユーコン川、野生動物、犬ぞり、先住民族……。そこには未知の世界がある。本との出会いも運。きみの窓も大きく開け放とう。

※上記の著作権は宮川俊彦にあります。
※無断での転用・転載を禁じます。

※出典:読書感想文おたすけブック(2006年)

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こんにちはアグネス先生

アラスカの小さな学校で

K・ヒル・作 宮木陽子・訳 朝倉めぐみ・絵 / あかね書房