ダニエルのふしぎな絵

ダニエルは絵をかくのが好き。いつも変わったものばかりかいていました。おどるコウノトリ、おしゃれをしたキツネ……。不思議な絵が次つぎに生まれました。ところが、写真家のお父さんにはその絵がまったく理解できません。

大好きなパパに喜んでほしい……。今日こそ、パパの写真みたいに目に見えるとおりにかこう。ダニエルはお父さんの喜ぶ顔が見たくて、がんばってみるのですが……。

画家になった作者がえがく、絵が大好きな女の子とその家族の、やさしいやさしい物語。

◎とっちゃんまんの注目!

すてきな絵だなあ!絵を見ているだけで楽しくなってくる。作者は画家で、絵本作家。ゆたかな人なんだなあと思う。

すてきな絵なのに、どうしてダニエルの絵はお父さんに理解されないのか、わかるかな?

写真家のお父さんは目にうつったものをありのままに撮ろうとする、写実的な写真の世界に生きている。そこには、お父さんのものの見方や美学がある。一方、ダニエルはダニエルの見方や感じ方そのままに絵をかこうとしている。

お父さんとダニエル、それぞれの見方や感じ方があるからなんだね。

ダニエルの絵はダニエルのものだけど、お父さんに受け入れてほしいという気持ちもいたいほどわかる。そう、この物語、ものを見て、感じて、表現するという道に生きている親子ならではのお話なんだ。

・ダニエルの世界とお父さんの世界

ダニエルの想像って、どんどんふくらんでいくんだね。想像をふくらませてかくのがダニエルの表現の方法。ダニエルみたいに自分だけの見方を持っていて、それが楽しいと思える人は、ほんとうに幸せだと思う。

ボクは、どちらかといえば、ダニエルの絵のほうがお父さんの写真より、たくさんのことを伝えられそうな気がする。「自分」が表現されているから。でももちろん、お父さんの写真にもお父さんらしい画面の切り取り方やくふうがあるし、真実にせまっているという人もいるだろう。

いろいろな見方があるし、好ききらいもある。見る人が何を求めているかにもよる。だから、芸術の世界、表現の世界はおもしろいんだよね。

・幸せって何だろう?

病気でたおれたお父さんの代わりにダニエルが働こうとするところは、とてもせつない。まずしい親子なんだね。

だけど、ダニエルは画家の助手になれて、前ばらいのお給料をもらって帰る。ラッキーだ。画家の女性に、「絵を見てみたい」とも言われた。この先ダニエルがどうなっていくのか、何となく見えてくるよね。

何より、ささやかな幸せを語る、作者の目線がいい。ダニエルのうれしさいっぱいの気持ちや、幸せそうなダニエルをやさしく見つめるお父さんの温かさ。「この子はこの子で、自分の道を見つけたんだな」という、お父さんの言葉もいい。

人にとっての幸せって何だろう?自分の生きる道を見つけること?自分らしい世界を大切にすること?そんな、作者からのメッセージも感じられるね。

だれかの後ろにくっついていくのではない。自分は自分の道を進むんだ、ひとりきりでね。そうやって生きていこうとしているダニエルを、きみはどう見るだろう?

※上記の著作権は宮川俊彦にあります。
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※出典:読書感想文おたすけブック(2006年)

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ダニエルのふしぎな絵

バーバラ・マクリントック・作 福本友美子・訳 / ほるぷ出版