おじさんのかさ

◎ふだん、あたりまえだと思(おも)って、うたがってもみなかったことを、うたがってみてほしい。このおじさんの場合(ばあい)は、ふつうとはぎゃくで、かさをとても大切(たいせつ)にあつかっていて、雨(あめ)の日(ひ)でさえささなかった。へんなおじさんだけど、たからものっていうのは、自分(じぶん)だけにしかわからない楽(たの)しみがあるんだよね。

◎かさというのは、雨(あめ)からからだをまもるもの。「○○から、○○をまもる(ふせぐ)」という、やくわりをもつものをさがしてみよう。「おかあさんのことばの雨(あめ)を、ふせぐかさをぼくはもっていない」など、これは、家(いえ)や、国(くに)や、自分(じぶん)というものにおきかえて考(かんが)えてみる。

◎かさのよいところが、どうじに、かさのけってんにもなる。人(ひと)のいっぱいいるところでは、かさから落(お)ちるしずくが、ほかの人(ひと)にかかったりする自分(じぶん)かってなものでもある。

◎おじさんは、ぬれたかさのよさを発見(はっけん)して、うっとりする。これは、かさのほんとうのつかい方(かた)を知(し)った喜(よろこ)びではなく、おじさんにとっては、たからものであるかさの、あたらしいみりょくを見(み)つけた喜(よろこ)びだろう。発見(はっけん)というのは、あたらしいものの見方(みかた)や、考(かんが)え方(かた)を見(み)つけて「はっ」とすること。世(よ)のなかにあるものごとを、みなおしてみることだね。

 

 

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※出典:きみにも読書感想文が書けるよ

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おじさんのかさ

佐野洋子・作 / 講談社