やっぱりおおかみ

おおかみってのは、むかしからわるいヤツに決(き)まってる。赤(あか)ずきんちゃんやおばあさんを食(た)べちゃったし、三びきの子(こ)ぶたをさんざんいじめているし、七ひきの子(こ)ヤギだって、わるぢえをはたらかせて、一度(いちど)はおなかのなかにいれてしまってる。

そういうヤツなんだから、とにかく見(み)つけたらころさなきゃ!と息(いき)ごんでいるうちに、世界中(せかいじゅう)におおかみがほとんどいなくなってしまったらしい。そこでたった一ぴきのこったのが、この本(ほん)に出(で)てくる子(こ)どものおおかみなんだ。

◎心(こころ)のなかのおおかみ。わるさをするほんもののおおかみを退治(たいじ)しつづけているうちに、心(こころ)のなかで、自由(じゆう)にあばれていたおおかみまで、きちんとかいならされてしまったのではないだろうか。

たとえば、「うその世界(せかい)を楽(たの)しむおおかみ」「親(おや)や先生(せんせい)のいいつけにもすぐしたがわないおおかみ」「とりあえずうたがってみるおおかみ」「めちゃめちゃにあそびたいおおかみ」。こういうおおかみがいつでも大(おお)あばれではこまるけど、なくしてしまって、いいのかな?

◎だれでもひとりぼっちのおおかみだ。まわりの人(ひと)とおなじ服(ふく)をきて、おなじものを食(た)べて、おなじようなことを考(かんが)えていればいいという。ほんとうは、外(そと)がわの皮(かわ)をひと皮(かわ)むけば、だれでもひとりひとりちがうおおかみなのかもしれない。

◎「け」。この本(ほん)に出(で)てくるおおかみのセリフは「け」が三回(かい)だけ。いったい、この「け」にどういう気(き)もちがこもっているか、考(かんが)えてみよう。

 

 

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※出典:きみにも読書感想文が書けるよ

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やっぱりおおかみ

佐々本マキ・作 / 福音館書店