オバケちゃんとおこりんぼママ

いやだな、こういう話(はなし)って。だって、おばけっていうのは名(な)まえだけで、

やることといったら、人間(にんげん)とまったくかわらないんだから。どうしてもっと、とんでもないオバケを考(かんが)えださないのかな。おばけが、人間(にんげん)と仲(なか)よくなってしまっちゃだめだと、ボクは思(おも)うわけだ。

◎オバケちゃんのママは、おこりんぼで、いつもガミガミどなる。おかあさんのこえって、おもしろいよね。つい、さっきまでおこっていたかと思(おも)うと、でんわがなると急(きゅう)に、きどったこえになったりして、君(きみ)はふだんのおかあさんのこえがすきかな?

◎「ママっていったい何(なん)だろう」おかあさんとの一日(いちにち)の会話(かいわ)をふりかえってみるといい。どんなことばを多(おお)くつかうだろう。

●「~しなさい」というめいれいのことば。「はやくおきなさい」

「宿題(しゅくだい)はしたの」「ちゃんとくつをそろえなさい」

●「~してはいけない」という禁止(きんし)のことば。「いつまでもテレビをみていてはダメ」「クチャクチャ音(おと)をたててものを食(た)べるのはやめなさい」

●「はやく~」「なんで~をするの」「何(なに)やってんの」

というように、おかあさんのつかうことばのパターンを分類(ぶんるい)してみるといい。

◎おかあさんだって人間(にんげん)だ。おかあさんというのは、いつも自分(じぶん)のことを見(み)てくれていたり、ときどき、「いけません!」なんてしかったり、毎日(まいにち)ごはんを作(つく)ってくれたり、せんたくしてくれたりするものだと、しかも、それがあたりまえなんだというふうに、思(おも)ってしまいがちなんだよね。このように、ほんとうにおかあさんが自分(じぶん)のことをわかってくれていても逆(ぎゃく)に、自分(じぶん)はおかあさんのことをどれだけ注意(ちゅうい)ぶかく観察(かんさつ)し、心(こころ)のなかをよみとろうとしているのだろうか。

●学校(がっこう)に行(い)っているとき、おかあさんは何(なに)をし、何(なに)を考(かんが)えているのか。

● ないているときのおかあさん。ないているときのおかあさんの顔(かお)。

身(み)ぶり、おかあさんはこえも出(だ)さずになくか、大(おお)ごえでなくか。そのこえってどんなこえだろう。また、いったい何(なに)がそんなにかなしいのだろう。

●何(なに)もしていないおかあさん。何(なに)もしないでポーッとしているおかあさんからでも、いっぱい発見(はっけん)できるよね。

このように、さりげない日常(にちじょう)の一コマをえがくことで、だれも気(き)づかないおかあさんをみつけてみよう。

◎なぜ、親(おや)は子(こ)を育(そだ)てるのだろう。人(ひと)の行(おこな)いには目的(もくてき)とねがいがある。君(きみ)のおかあさんだって、まさか、ドロボウや人(ひと)ごろしにしようと思(おも)って、君(きみ)を育(そだ)ててはいないよね。おかあさんやおとうさんが、君(きみ)にたくすねがいって、どういうものだろう。君(きみ)がおいしゃさんになること?学校(がっこう)の先生(せんせい)になること?うん。たしかに、自分(じぶん)の子(こ)どもに「こんな仕事(しごと)がさせたい」という親(おや)のねがいってあるだろうけど、まず、人間(にんげん)としてこんなふうな人(ひと)になってほしい、という親(おや)のねがいがあるんではないか。君(きみ)のおとうさんやおかあさんは、君(きみ)に対(たい)してそういうねがいをもっているだろうか。また、そういった親(おや)のねがいに、君(きみ)は、ぎもんをもつことはないだろうか。

◎音(おと)が、まわりのふんいきをガラッ(がらっ)とかえる。この話(はなし)でも、オバケちゃんのおとうさんのいびきが「ヒュー、ドロドロ、ドロ」とか、オルガンの音(おと)が「バウーッ」とか、かいだんをおりていくとき「ドドドドド」だとかいろんな 音(おと)がでてくる。音(おと)をかくと、場面(ばめん)をせつめいするよりも、ずっとかんたんに、ふんいきがつたわる。たとえば、朝(あさ)おきて学校(がっこう)に行(い)くまでのあわただしいようすを、音(おと)だけでかいてみたらどうだろう。

◎音(おと)をせつめいしてみよう。風(かぜ)がまどガラスに「ヒュウ」とふきつける音(おと)、ドアが「ギギギーッ」とゆっくりひらく音(おと)、など、さまざまな音(おと)を、なにかにたとえてみよう。車(くるま)のエンジンをふかす音(おと)は"番長(ばんちょう)のいばった顔(かお)"。サイダーのあわの音(おと)は"お友(とも)だちとのひそひそ話(はなし)"というように。

 

 

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※出典:きみにも読書感想文が書けるよ

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オバケちゃんとおこりんぼママ

松谷みよ子・作 いとうひろし・絵 / 講談社