このはのおかね、つかえます

高原の大きなシナノキの近くに、母さんたぬきと こだぬきがすんでいました。たん生日のプレゼントに何がほしいか たずねられたこだぬきは、「ヤマキヤの あの白くて、くるくるしたもの」と きっぱり。ソフトクリームです!

ヤマキヤは人間のおみせです。さあ、こまった ことになりました。

母さんたぬき、どう するんでしょうか。

◎とっちゃまんの ここにちゅうもく!

ソフトクリームをたべたいというこだぬき。母さんたぬきは かわいいこだぬきに 木の葉のお金で買いあたえる。ここまでは、よくあるストーリー。

だけど、このお話はそれだけではおわらない。心がぽっとあたたかくなる。そのひみつ、どこにあると思う?

・ことばの力、手紙のカ

ヤマキヤのおじいさんに、こだぬきがせっせと手紙を書く場面があったね。手紙は風にのってびょういんにとどく。そして、こだぬきとおじいさんのあいだに何かが生まれた。心がつたわった。心をつたえたのは、こだぬきが一生けんめい書いた手紙だった。

ボクは、そこに、ことばの力、手紙の力を感じたよ。この本の中で とても大切なところだと思う。

・木の葉のお金は、つかえません

それは、そうだ。はじめのはり紙を見て、通りかかった人間は わらっていたよね。人間のせかいでは、モノとお金をこうかんするしくみになっているからね。ところがおじいさんは、もらってもやくにたたない木の葉のお金を、つかえることにしてしまった。どうして?

・このはのおかね、つかえます

おじいさんは、「このはのおかね、つかえます」というはり紙を、こだぬきに読めるように ひらがなで書いて出したね。そのわけは……?

ボクはね、このはり紙、こだぬきへの へんじだと思う。文はみじかいけど、気もちはたくさん入っている。「手紙をありがとう。うれしかったよ。おかげで元気になったよ。またソフトクリームを かいに来てね。まっているよ。木の葉のお金、つかっていいよ」。

こんな気もちがこめられて いたんじゃないかなあ。

 

 

※上記の著作権は宮川俊彦にあります。
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※出典:読書感想文おたすけブック(2004年)

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このはのおかね、つかえます

茂市久美子・作 土田義晴・絵 / 佼成出版社