いやー。何(なに)をかくそう、このボクはドラエモンが大すき。
ドラエモンだけにかぎらず、マンガが大(だい)すき、テレビ大(だい)すき、スポーツ大(だい)すき、ごはん大(だい)すき、CD(シーディー)大(だい)すき、アンパンマン大(だい)すき、みんなすき。
おまけに地球(ちきゅう)がすきで、月(つき)がすきで、太陽(たいよう)がすきときたもんだ。ホイホイ!
っと。
そのなかでも一番(いちばん)すきなのがドラエモンなんだナ。
どこがそんなにすきなのかって?
それはね。
あんなもの、ほんとうはいない。だからすきなんだナ。だってサー、どこにもいやしないんだもん!
あの「どこでもドア」だってあるわけない(でもアメリカやソビエトの秘密(ひみつ)へいきとしてあったりしてね)。ないから、ほしいナーと思(おも)っちゃうのです。
つくえの上(うえ)にドーンと山(やま)づみされた原稿(げんこう)用紙(ようし)からにげたいし、北(ほっ)きょくへ行(い)って氷(こおり)をくだいてシロップをかけ、かき氷(ごおり)にして食(た)べてみたい。月(つき)へも行(い)きたい。トンボのめのなかにもはいってみたい。
いろんなことができたらいいナーと思(おも)う。でも、できないんだよね。
どこでもドアをつかって、アッというまに行(い)きたい所(ところ)に行(い)けたらいいんだけど、いまのところそれはむり。
だから人間(にんげん)は〝歩(ある)く〟ことを知(し)ったんだ。そして歩(ある)いた。
もっとはやく、もっとはやく。もっと楽(らく)に、もっと楽(たの)しく。
人間(にんげん)はらくだに乗(の)った。ゾウに乗(の)った。牛(うし)に乗(の)った。馬(うま)に乗(の)った。
動物(どうぶつ)だけではものたりない。いくら動(うご)いてもつかれないものがほしい。そこで人間(にんげん)は機械(きかい)を作った。
自転車(じてんしゃ)を作(つく)った。蒸気(じょうき)機関車(きかんしゃ)を作(つく)った。船(ふね)をつくった。自動車(じどうしゃ)を作(つく)った。飛行機(ひこうき)を作(つく)った。近(ちか)いしょうらい、そう君(きみ)たちがおとなになったころには、映画(えいが)でよく出(で)てくるように、人間(にんげん)を分子(ぶんし)にぶんかいして、すきなところにしゅんかん的(てき)に移動(いどう)できるようになるかもしれないね。
人間(にんげん)がいままでにねがっていたことができる「どこでもドア」。だから、ボクはドラエモンがすきなんだよ。
おっとわすれちゃいけない。ドラエモンがすきなもうひとつのりゆう。
それは何(なん)でもポケット。これはいいよね。
おこっているときには、高原(こうげん)のすてきな香(かお)りを!
ないているときには、さわやかな朝(あさ)を!
かぜのときには、コンタックを!
ベンピのときには、カンチョーをとり出(だ)せる!
ちょっときたなくなったけど、こんなぐあいにできたらいいな、なったらいいなというねがいがここにもあります。
ドラエモンという二十世紀(せいき)のスーパースターを生(う)み出(だ)した作者(さくしゃ)の藤子(ふじこ)不二雄(ふじお)さんのおもい、ねがいがそこにはあるのです。
君(きみ)たちとドラエモンのちがいを、ちょっと考(かんが)えてみよう。あのまんまる顔(がお)、あのとんでもなくみじかい手足(てあし)。いや、そんなことじゃないんだよ。
仮面(かめん)ライダーだったら変身(へんしん)できるとか、ウルトラマンだったら大(おお)きくなれるとか……。
これがちがいだ。そのちがいっていうのが見(み)えてくれば、その人(ひと)や物(もの)というのがわかるんだ。そして、その人(ひと)の考(かんが)え出(だ)したねがいや思(おも)いっていうのがわかってくるんだね。
こりゃあ、たいへんなことなのですゾ。
ちがいということがわかっていれば、友(とも)だちを見(み)るときにも、また自分(じぶん)のことを他人(たにん)に話(はな)すときにも、そのちがいでもって話(はな)すことができるんだ。
だから、ちがいを見(み)つけて、そのなかにあるねがいや思(おも)いを見(み)つけられれば、読書(どくしょ)感想(かんそう)文(ぶん)のきそはもうできたようなものなのでアール。
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※出典:きみにも読書感想文が書けるよ パート2(1・2・3年向)(1990年)