干し柿

干し柿

西村豊・文・写真 / あかね書房

 

きみは干し柿を食べたことがあるだろうか。どうやって作るのか知っているかな?干し柿はしぶ柿から作るらしいのだけれど、いったいどういうしくみで、しぶい柿があまくなるんだろう?

この本は、今ではあまり見られなくなった干し柿作りの文化を、美しい写真で見せてくれる「なるほど」本。きみの目からウロコが落ちるかもしれないよ。

自然の恵みのありがたさ、古くから伝わる人の知恵、そして、手仕事のすばらしさ。お日様の光をあびてかがやく干し柿が、ボクたちに大切なことを教えてくれる。さあ、さっそくページを開いてみよう。

◎とっちゃまんのここに注目!

秋の終わりにえだの先に柿の実を一つだけ残しておくのは、「人から自然へ、かんしゃのしるし」なのだという。「なるほど!」と思った。ボクは、「高いから取れないのかな」くらいにしか考えていなかったんだ。

この最後のページの写真、とりわけ美しいね。えだの先にぽつんと残った柿の実に、作者のメッセージがこめられている気がするよ。

・写莫は何を教えてくれた?

ボクのふるさとは長野。よくおやつに柿を食べたよ。そういえば、ボクの家でも、のき先に柿をつるしていたっけ。昔は今よりずっとふんだんに野や山の恵みをいただいていたんだよね。

けれども、最近はそういうことがへってきて、柿を取ることもなくなり、むしろ、木に残ったままの柿が問題になっている、と聞いたことがある。日本のくらしは大きく変わってきてしまった。

干し柿がのき先いっぱいにならんだ風景は、実りの秋の風物詩。しかし、この本で初めて見たという人も多いんだろうな。

柿の色でそまった写真、きみの目にはどううつるのだろう?写真がきみに語りかけるのは、どんなこと?ぜひ聞かせてほしい。写真を見て思ったこと、感じたことを、そのまますなおに感想文に書いてみるといいよ。

・先人の知恵

人が今の干し柿の作り方にいたるまでには、どのくらいの年月がかかっているんだろう。だれがいつ、どうやって、しぶを抜く方法を見つけたのかな。はるか昔に思いをはせて、こんな想ぞうをしてみるのもおもしろい。

干し柿には、先人たちのくらしの中での発見や、知恵や工夫が息づいている。ボクらは先人から伝わった文化の恵みを受けているんだ。そう考えると、どこかおごそかな感じがしてこないか?

・おばあちゃんの手

干し柿作りの名人のおばあちゃんの写真がいい。手を見てごらん。よく働いてきた人の手だね。見ていると、なんとなくジーンとしてくる。

「干し柿が、大事なおやつだったんだよ。むいた皮も干して、おやつがわりに食べたりして、大切にしたんだよ。」という言葉にも目を向けたいね。

・「考えるまな板」で料理しよう

干し柿、食べてみたいよね。手に取ってみたいし、味をたしかめてみたい。感想文には間に合わないけれど、秋になったら自分で作ってみようか。

「自然」、「手作り」、「加工」、「干す」といった切り口からアプローチする手もある。さて、きみはどんな方法で、感想文を料理するかな。

この本を「考えるまな板」に乗せるのはきみ自身。わかりやすい内容でいて、きみの意見や考え方が問われる作品だよ。

 

 

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※出典:読書感想文おたすけブック(2007年)