斉藤洋・作 杉浦範茂・絵 / 講談社
「ぼく」の名前は、ルドルフ。といっても外国人ではない。日本人でもない。もちろん宇宙人でもない。ぼくは……一ぴきの黒ねこ……しかも、字の書けるねこなんだ。
事の始まりは、ぼくがいつものように魚屋で魚をぬすんだコト。おいかけてくる魚屋からにげて、ぼくは道に止まっていたトラックにのりこんだ。そして、気がつくと、遠い東京まで運ばれてしまっていたんだ。
東京でぼくは、トラねこの「イッパイアッテナ」に出会った。へんな名前だけど、トラねこが「おれの名まえはいっぱいあってな」と言ったのを、ぼくは「イッパイアッテナ」って名前なんだとかんちがいしちゃったんだ。
◎とっちゃんまんのここに注目!
たくさんのファンがいる傑作中(けっさくちゅう)の傑作(けっさく)。ボクはこの本を読んで、久しぶりに「男だぜ!」ということを感じてしまった。自分の友人が自分のためにと思ってやったことできずついたら、ボクだって、きっとこのルドルフみたいにするだろうな。きみはどう?なんか男っぽくて、単純かもしれないけど、かっこいいじゃん!の世界だよね。
ついでにいうと、ねこが、字が読めて書けて、地図帳まで見て、という世界もいい味出してるよね。ねこに負けてられないっていう気になる。
・ルドルフ
きみは、ルドルフをどうとらえる?「ひ弱なかいねこがいろんな体験や友情を通して強くなっていく」という図式で見てみる?もちろん、それもありだけど、なんだかそれではもの足りないよね。別の見方をしてみたい気がする。
たとえば、どうしてイッパイアッテナくんは、ルドルフをかわいがったんだろう。ルドルフにホネっぽさを感じたのかもしれないね。
ひとついえることは、ルドルフがよそ者だということ。それから、イッパイアッテナにとっては、かつての自分と同じように見えたこと。このへん、おとなっぼく考えてみたいところだね。
実際、ルドルフは、イッパイアッテナくんの友情や教えにしっかりこたえるものね。いいヤツになったものね。ブッチーもまきこんでね。
いい仲間だよねえ。人以上の世界だ。
・イッパイアッテナ
イッパイアッテナって、かいねことはだいぶちがうよね。ひとりで生きていかなければならないからね。そのくせ、ナイーブっていうのかな、けっこうきずつきやすくてせん細なところもある。
強いやつって、心のひだが多いような気がするね。「強さとは何か」ってことを考えてみてもいいかもしれない。
彼はさみしいんだと思うな。ルドルフがパスで帰って一人になったら泣くんだよ。きっと。これが、ボクが見たイッパイアッテナだ。
・ルドルフが得たものは?
さて、この物語って、「かいねこはりっぱなのらねこになりました」というような単純な話じゃないよね。ルドルフが得たものは何だろう。考えてみようよ。
ボクはこのねこたちに人生について教えられたって気がしたよ。たとえば、あまえることだって生きる手段だってこと。この本の中には、そんなふうにハッとさせられることが、たくさんあるよね。
心の通いあい。心のつながり。人と付き合うときに大切なものは何か。この物語を深読みするとき、感想文を書くときのポイントになるね。
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※出典:読書感想文おたすけブック