ゲド戦記Ⅰ-影との戦い

 数の島島と海からなるアースシー(EARTHSEA)。ゴント生まれの少年ゲドは自分に不思議な力がそなわっているのを知り、真の魔法を知るために ローク学院に入る。

天気や風を操る術、目くらましの術……。ゲドの進歩は早かった。得意になったゲドは、禁じられた呪文を唱えてしまう。

おごりとねたみの心から、死の影を呼び出してしまったゲド。影に追われ、あるいは影を追いつめてたどりついた世界の果てで、いったい何が起こるのか?「光は闇に生は死の中にこそあるものなれ」――ゲドの長く困難な戦いが始まった。SFとファンタジーの名手、アーシュラ・K・ル=グウィンが織り  なすハイ・ファンタジーの大傑作、第一巻。

◎とっちゃまんのここに注目!

「ハリー・ポッター」シリーズ以来、魔法モノの物語が次つぎに刊行されているけれど、「ゲド」シリーズはその大モトともいうべき作品だ。

しかし、「ストーリーはおもしろいけれど、感想文を書こうとするとうまくいかない」というきみたちの声が聞こえてきそうだね。

それはそうだ。おもしろい本にはそれ自体で価値がある。こういう本はただ読みふければいいんだ。無理に感想文にしなくてもいい。

むしろ感想文としては、自分の意見が見えやすく、書きやすい作品を選んだほうがいいかもしれない。確かに感想文には何を書いてもいい。感想は自由でいい。何かにしばられる必要なんてないんだ。だけど、書くためのテーマが  見つからないと、「楽しかった」で終わりがちだものね。

きみには一歩上を行ってほしいから、書ける、書きたいと思うのなら、この本をすすめる。『影との戦い』のほかに、あと四柵の続編、それに外伝があるから、一気にのめりこむのもいいだろう。すべてを読破してから感想文に向かえば、最高だね。六柵を通してつらぬかれているテーマを探してみるといいよ。

この本、ただの魔法使いストーリーじゃないぞ。ストーリーのおもしろさはいうまでもないけれど、この作者、ストーリーだけで読者を引っ張るようなことはしない。おく深く、広がりのある世界をしっかりと作っていると思う。

会話、言葉、対比、展開。「おっ」と思わせるところがたくさんあって、    作者の人間への興味や、世界に対する深い思想が感じられる。だから、探求の対象としては絶好の本じゃないかな。文中から「何か」を導き出して、こだわってみてほしい。

・真の名

たとえば、「真(まこと)の名」という言葉がよく出てくる。「真の名」を知ること、知られることの攻防もある。「真の名」はまた、魔法使いたちの魔法の軸にもなっている。これは大きなカギになるね。

きみはきみの、ボクはボクの名を持っている。だれかが名づけた。しかし、ほんとうの名は何だろう?なあんてね。

 名づけられて、人やモノは存在し始める。名づけられて初めて、みんなに認知される。名をつけるということは、命をあたえるということなんだね。山も木も草も、花も魚も星も人も、みんなそうだ。世界は名前でできている。世界は言葉で表されるんだ。

・ゲドと言葉と魔法

ゲドの心や行動に注目してみよう。そこから切りこんでいくと、ストーリーのおくにあるものが見えてくると思う。

ゲドやオジオン、魔法使いたちが使う魔法にも注目だ。読み進むにつれて、確かに魔法は魔法なのだけれど、哲学や科学、思想のような気もしてくる。

ボクはやっぱり「言葉」と「魔法」に注目したい。人は言葉ひとつで魔法にかかったようになることもあるよね。ママのひとことでカタまっている子も いるしね。そんな経験があるなら、もうテーマにアプローチしているような もの。すべては言葉の内にあるのかもしれないそ。

 

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※出典:読書感想文おたすけブック

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ゲド戦記Ⅰ-影との戦い

アーシュラ・K・ル=グウィン・作 清水真砂子・訳 / 岩波書店