さんにん400キロ冒険の旅

光(ひかり)たちのクラスの担任の重田(しげた)先生が、春休み前のホーム・ルームで言い出した。「五年生最後の『思い出づくり』をしようじゃないか」と。

光が考えた「思い出づくり」とは、「住んでいる静岡から、祖父母が住んでいる若狭(わかさ)まで、愛犬の良(りょう)太(た)と二人っきりで400キロの自転車の旅をする」こと。

心配する父母や兄、なかのいいクラスメートたちや重田先生、通っている空手道場の師範(しはん)の島(しま)先生と仲間たち、そんな大勢の人々に見送られて、光は出発した。一年前に買った赤い愛車に乗って……。

「ふたり」は無事、400キロ走って若狭につけるのだろうか?そして、題名の「さんにん」とはどういう意味なんだ?

◎とっちゃんまんのここに注目!

元気になるねの一冊。なんてったって、犬がしゃべるのがいい。その犬が人間よりしっかりしていて、教養はあるし、情も礼節もあるんだから、またいい。

しっかりものの犬と人間の話。気軽に読めて、読み終わるとさわやかな感じがする本だ。

・さんにん

「三人」と書かないところがミソ。これだけの見識を持ったワンコたちには、やはり「にん」の呼び方を与えるべきだよね。

良太とクロの「ふたり」がいなくては、主人公の光君、400キロの自転車旅行は無理だっただろうなあ。

お金がなくなるとアルバイトまでするワンコ。けなげだよなあ。ボランティアもする。そのうえ勇かんだ。こんなワンコ、いたらいいなあ。

「良太がついているからだいじょうぶ」といわれてしまう光少年はちょっと情けないけれど、いやいや、どうして、勇気がある。男の子だよな。一度決めたことはとことんやりぬく。

「さんにん」のチームとしての力量はたいしたものだ。

・犬

犬の世界もなかなか大変だ。

犬たちの言葉がわかったら、きっと、いろんなぼやきやなげきが聞こえてくるだろうね。人間の身勝手やいいかげんさにうんざりしているかもしれない。

保健所で殺されそうになったところを助けられる良太……。ペットとしてかわいがられていたのに、人の都合で捨てられたクロ……。

犬の側から見た悲哀感(ひあいかん)がえがかれていく。夏目漱(なつめそう)石(せき)の『吾輩(わがはい)は猫である』みたいなシャープさがある展開だよね。

怒り、喜び、悲しみ、なみだ。君はこの本の犬たちの考えや行動をどう見ただろう?人と犬のつきあいは長い。その理由、なんとなくわかるような気がする。

・想像

犬の文化や生活に思いをめぐらせてみよう。ねこではこうはいかないという部分、たくさんあるんじゃないかな。

犬をかっているなら、改めて観察してみるのもいいよね。その犬に人間語をしゃべらせてみたりしてさ。

感想文としては、「さんにん」の物語自体をほり下げていくというやり方もあるけど、身近なペットや動物をまな板の上に乗せて「しゃべらせる」方法もアリだね。

ペットたちの身になって、彼らの心や考えをさぐってみよう。

「この本を読んだわたしのペット、ハムスターのハム三郎は、こんなことをいっていた」なんて書くのも楽しい。

旅をしながら成長するパターンの物語だけど、主人公はひ弱ではなく(うれしいぜ)、初めからしっかり者っぽいところのある男の子。計画する、スタートする、実行する、やりぬく。そういう素質があるって、すごいことだよね。

 

 

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※出典:読書感想文おたすけブック

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さんにん400キロ冒険の旅

笠原靖・作 依光隆・絵 学習研究社