ミコは小学一年生。「スズ」というねこがいっぴきいます。スズはミコが生まれる1年くらい前の雨の夜、ママがひろってきたねこなのです。
ミコのパパはえかきさん。スズが来てから、ねこが大すきになって、ね
この絵ばかりかいています。ある雨の夜、ソファでうとうとしていたミコの耳元で「こんやはたのしいねこ祭り。〈ねこたち町〉へいきましょう。というスズの声が!
「ねこ祭り」って?そして「ねこたち町」ってどこ?どうしてスズはとつぜん人間の言葉を話しているの?
◎とっぢゃまんのここに注目!
「あるある、きっとこういう世界ってある!」って思ったよ。
動物にいたずらしたり、いじめたり。かと思えば、ペットを王様あつかいしてみたり。世の中には困ったことがじつに多いし、動物のことをよくわかっていないんじゃないかということも多いよね。この作品の大モトには、「動物のことを、みんな、もっとよくわかろうよ」という気持ちがあるんじゃないかな。
・〈ひとねこ〉
この言葉、いいね。人だって、ねこと同じなんだ。いつだってねこになれる(これ、「ねこっぽいやつ」というような意味ではないんだよ)。
この本では、人とねこのちがい、〈ひとねこ〉とねこのちがいについておもしろいことが語られていた。チェックしてごらん。
ミコと小林くんの会話――見えないもの、聞こえないものを感じ取る能力のこと――にも、考えさせられたね。
人間はいつのまにか、目に見えるものだけ、理解できるものだけを信じるようになってしまった。
〈ひとねこ〉になって、見えないこと、聞こえないことも感じ合えたら、伝え合えたらいいな。
・変身
なりたいものになるパパに、大人っぽい主人公……。人の願いって、変身願望をかなえようというときにはっきりと見えてくるものなんだよ。
さて、みんなが思い思いの変身をとげているところにかくされている、ふだんの思いって、何なんだろう?
こういう視点を持って読むと、この物語全体にひそんでいる「もう一つのストーリー」が見えてくるんじゃないかな。
・ジロウ
ジロウの場面には、ペットについてのメッセージがあったよね。
以前、ボクが飼っていた犬が、ボクが病院にかつぎこまれたときに死んでしまったということがあった。みんなに「身代わりだ」と言われてさ。ボクは悲しくて悲しくて、そのとき、「もう絶対にペットは飼わない」とちかった。
でも、この物語のジロウの場面を読んで、ペットと生きることは、人が明るく元気に兄弟を持って生きることと同じだと思えた。少し救われた気持ちになった。
きみも、きみのペットや動物とのかかわり、できごとを思い出してごらん。そんな体験とこの物語をすり合わせてみたらいいんじゃないかな。
感想文のポイントをもう一つ。「ねこたち町は絶対にある」、そう思って読み、書くと、きっとおもしろい感想文になるぜ。
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※出典:読書感想文おたすけブック(2002年)
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ねこたち町
わしおとしこ・作 藤本四郎・絵 / アリス館