エミリー・スミス・作 もりうちすみこ・訳
村山鉢子・絵 / 文研出版
ぼくはジェイムズ。ぼくの母さんは、よその母さんとちょっと、いや、かなりちがう。
母さんはロボット科学者。頭はすごくいいんだけど、同時にあきれるほどおバカさんなんだ。たとえば、家事がまるっきりダメ。学校への連絡もわすれてばかり。母さんのたび重なる失敗に、ぼくはいかり大ばくはつ!
そこで母さんはひらめいた。家事をまかせるロボママを作るんだって!そして、おどろくまもなく、わが家にロボママがやってきた……。
ぼくとママとロボママが引き起こす大そうどうとは?思いっきり笑えてじーんとする、おもしろかったかストーリー。
◎とっちゃまんのここに注目!
日本はロボット先進国らしい。ボクたちの生活にロボットが入りこんでくる日も近いかな。すでにペットロボットがあるし、考えようによっては、洗たく機やそうじ機は家事ロボットのようなものだしね。エアコンに防犯システム……家そのものがロボットになりつつあるといってもいいぐらい。で、この物語、ありえないことのようでいて、じつは現実の問題をうつしとっていると思う。
ロボママが引き起こす事件やエピソードのひとつひとつを、しっかりチェックしてみよう。ママとジェイムズの生活は、ロボママの登場でどう変わったか?ロボママのダメなところはどんなところか?ジェイムズとのギャップはどのへんにあるのか?人間や人間社会のもっているあいまいさと、ロボママとの問にある誤差のようなものをさがし出してみよう。そうすると、意見も出やすくなるよ。
ジェイムズの「生身のママ」にも注目。このママ、とってもチャーミングあよね。
ロボママVS生身のママ
ジェイムズのママって、カッコいいね。天才的な科学者で、大きな仕事を次つぎにこなしている。だからいそがしい。いそがしいから、子どものことや家事のことは最低限。現代の働くママたちのすがただね。こういうママがいたら、ほこらしいだろうな。
だけど、ロボママを否定して、「やっぱり機械のママより、ぬくもりのある人間のママのほうがいい」ってまとめるのは、ちょっとつまらないし、物足りない。
ロボママはいてもいいんじゃない?ロボママの限界は何か、知ることが大切。ママの家事に不満だったら、自分でやってもいいわけだしね。
きみには、ロボママと生身のママのちがいや境界線のようなものを見つけ出してほしいと思う。
・人間らしさつて何?
正直いって、ボクはロボママがほしいな。機械的にちゃんとこなしてくれるなら、家事やお使いはロボットでいい。機械にまかせられることは機械にまかせてオーケーという意見もありだと思うんだよね。
じゃ、人間らしさって何だろう?どんな高性能ロボットにもできないこと、人でなくてはならないことって何だろう?ボクは、ミスやトラブルこそが人間の最も人間らしいところであるという気もしている。これ、ヒントにして、考えてほしい。
ロボットと人との境界線をさぐっていくと、いろんなことが明らかになっていく。便利さや正確さ、安全性、効率を求めて、人の社会はどんどん作り変えられていくから、人間にしかできない領域って、ますます大事になるはずだ。
※上記の著作権は宮川俊彦にあります。
※無断での転用・転載を禁じます。
※出典:読書感想文おたすけブック(2006年)
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ロボママ
エミリー・スミス・作 もりうちすみこ・訳
村山鉢子・絵 / 文研出版