天(てん)福(ぷく)丸(まる)は、三日月(みかづき)城(じょう)のわかとの。父上のおとの様をついで、つぎのおとの様になることになっている。でも、もう九つなのに、何といまだにおねしょをすることもあるんだ。ともあれ、父上、母上、姉姫たちと毎日にぎやかにすごしている。
そこにふってわいた一大事!江戸から帰ったご家老(かろう)三太夫(さんだゆう)が、「お国がえのご命令が将軍様からだされた」というのだ!「お国がえ」とは、おとの様がお城のこ家来たちと、よそのお城にひっこすこと。二千両ものお金がかかるらしい。そこで天福丸は城下のさくらまつりで、お城のみんなであきないや大道芸をしてお金をつくることを考えついたのだが……。
◎とっちゃまんのここに注目!
楽しい作品だよね。ほとんど、「水戸(みと)黄門(こうもん)」か「暴(あば)れん坊(ぼう)将軍(しょうぐん)」の世界。
わかとのの行く手には、どんな苦労が待ち受けているのか?はたしてわかとのは、数々の苦労を乗りこえられるのか。しかも、ストーリーには、ある「ひみつ」がしかけられていたよね…。おもしろいお話だ。世間知らずのわかとのが、しっかり笑いをさそってくれるよね。
・江戸時代
ぶたいは江戸時代。これもこの物語のポイント。社会のしくみ、身分のちがい。現代とは何かと事じょうがちがう。まして、主人公は「との」という立場になる人間だ。このあたりがおもしろいところだよね。
たとえばさ、との様にはリーダーとしてのそしつが求められるよね。ただいばって、わがままいって、やりたいほうだいやっていればいいってもんじゃないから、せきにんはそうとう重い。
それから、身分制度がしっかりしていた時代って、れいぎ作法や心がまえなどのしつけもきびしかっただろうから、そんな点から考えちゃうこともあるよね。「こんな時代じゃ身が持たないよ」とかさ。
あと、今とは何がちがったのかなあ。
「ああ、おもしろかった!」でも、もちろんいいんだけど、時代をキーワードにして、何かほり下げて考えるテーマを見つけてみたいよね。
・さて、ポイントは?
ひ弱でたよりない男の子が、さまざまな体験を通して強くなっていく成長物語。やっぱり、キーポイントはこれ。
このわかとのは、ほんと、あまえんぼう。だから、おともら、三太夫も、気が気でなかった。そして、わかとのはどう変わったか?ボクはこの本には、「おい!男の子たちよ(女の子もだけどね)、しっかりしなきゃいかんよ」という メッセージがこめられているような気がしたよ。きみはどう受け取ったかな。
・にてる?にてない?
ちょっと失礼なコトをいってしまうけど、わかとのと、今の時代に生きるきみとは、じつはにているところがあるんじゃない?むかしは子どものうちに奉公に出る(人の家で働くことだよ)こともめずらしくなかったし、十代で人生のおおよそのことを体験してしまう人も多かった。
でも、今の時代には、二十才になっても三十才になっても世間を知らないままの、わかとのや姫様がたくさんいる。だれに守ってもらっているんだろうね。わかとののような特訓、したほうがいいかも。
ま、そんなことはともかく、自分とわかとのをくらべてみるとおもしろいんじゃないかな。「もしもボクがわかとのだったら?」これって、本を読むときの考え方のひとつだよね。
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※出典:読書感想文おたすけブック
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あっぱれ!わかとの天福丸
小暮正夫・作 吉見礼司・絵 / 金の星社