五十円玉を持っておいで。それを観察しよう。真ん中に穴が開いているよね。この理由は知ってるかな。
富本銭とか和銅開称とか、古い硬貨にも穴が開いている。別に風通しをよくしようというのじゃない。
なぜ穴があいているか?それはね、ひもが通しやすいからなんだ。財布がなくても持ち運べるからね。銭形平次なんていう人はこれで悪人をこうげきしていたね。
今のお金なら、穴があるのは五円と五十円だ。百円や五百円に穴は開いていない。ということは開いているから五十円の価値がある。開いていないならにせものということになる。
穴が開いているから価値がある。そこにね、考えが行き着いたときに「おー、穴も価値かー」と気づくんだよ。そして、それが君の考えの「核」になる。
丸い輪っかのドーナツも同じだと連想しよう。あれも穴があいているからドーナツらしい。穴があいていなかったらパンと見分けがつかない。
☆ないことが価値になる
使えないコップを開発してみようか。
水を入れるところが何かでうまっていたら、水はこぼれるぇ。使えないよな。ということはコップとしての価値はないんだ。使えない指輪なんていうのもおもしろい。
な。こうして考えていくと五十円玉だけじゃなくなる。「穴」「空間」「すきま」そういうものには価値がないと思われているけど、ちがうじゃん、価値あるじゃん。
「ないことが価値になる」というところに行き着いて、君の考えの「核」ができれば、それを中心に連想があちこちに広がって、そこから進展していくよな。
いいかな。これは考えのひとつの進め方さ。
「核」とは、思いつきだ。着眼点とも言う。
着眼点を見つける、それだけならまあふつうだ。それが独特であってもな。そこから「これは何かな」と当たり前のことや見過ごしていることを、ふみとどまって見るんだ。そうすれば、着眼点の先に「なぜ」が生まれる。そこで、調べりゃいい。
「どこかに正解はあるさ」と考えていたら、先に進まない。そういう人は、みんな同じ答えを知って満足する。それだけさ。
ここでのポイントは「ない」とみることができるかだね。これはどこにも書いてない
☆「ないもの」から「あるもの」が見えてくる
これでもう五十円玉の感想・批判文は書けるよね。骨格ができた。よかったな。もう君は知ってしまった。おめでとう。これからは応用していったらいい。
「ないもの」は「あるもの」を形成する。百円玉も穴はないが周りの「ない空間」が形を作っている。ホーラ、すごい認識じゃないか。
てことはだ。読書も書いていないところ、行間、ないものによって文字や文がうかびあがるということになる。
いいね。書いてあることだけを読んで分かったと思ったらダメだよ。書いてないことにこだわる。ちょっと前進した気になるだろう。
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