目(め)をさませトラゴロウ

お話(はなし)っていうのは、たいてい「もしも」の世界(せかい)なんだけど、この話(はなし)の「もしも」は、とびっきりおもしろい。どうぶつがでてくる話(はなし)ってのは、たいていの場合(ばあい)、人間(にんげん)となかよくなってめでたしめでたしなんだけど、このトラのトラゴロウは、ちょっとちがう。みじかい話(はなし)が、たくさんあつまった本(ほん)なので、どれかにしぼってかいてみよう。とくに、さいしょの三つは、おもしろいそ。

◎もうひとりの自分(じぶん)。発明家(はつめいか)のキツネが一つのものを二つにふやすきかい

を作(つく)る。トラゴロウは、キツネに「ボクを二匹(ひき)に、ふやしてくれ」とたのむ。もしも君(きみ)とまったくおなじ人間(にんげん)があらわれるきかいができたとしたら、どうする?もうひとりの自分(じぶん)に、学校(がっこう)や塾(じゅく)にいかせて、自分(じぶん)は、家(いえ)でファミコンをしたりするのかなあ。それとも、ふたりともおなじ考(かんが)えをしているので、トラゴロウのように、まったくどうどうめぐりのケンカになってしまうだろうか。

◎きばのないトラは、トラじゃない。トラゴロウは、なくなったかたほうのきばをさがしにでかける。でも、きばのないトラなんて、だれもこわがったりはしない。たとえば、にわとりには、みみずを食(た)べさせられるし、ひつじからはかれくさを食(た)べさせられる。しかし、きこりの家(いえ)できばをとりもどしたトラゴロウは、これまでトラゴロウをばかにしたきこりや、ひつじたちをみんな食(た)べてしまう。「きば」ってなんだろう。君(きみ)にはトラゴロウのような「きば」があるだろうか。

◎ほしいものがなんでもでてくるはこ。さいしょにほしいと思(おも)ったものと、あとから手(て)にいれたものは、まったくおなじだね(この場合(ばあい)はりょうし)。

トラゴロウは、ただめんどうなことをしただけだったのだろうか。それとも、このふたつのあいだには、何(なに)か大(おお)きなちがいがあるんだろうか。もしかすると、「なぜだろう」と思(おも)っただけでも、トラゴロウにとっては、プラスだったかもしれないね。

 

 

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※出典:きみにも読書感想文が書けるよ

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目(め)をさませトラゴロウ

小沢正・作 井上洋介・絵 / 理論社