虹の谷のスーパーマーケット

虹の谷のスーパーマーケット

池川恵子・作 村上勉・絵 / ひくまの出版

 

川の途中にある大きな池のうえにときどきさかさ虹が見える……そんなところから虹の谷の名前がつきました。この本はその虹の谷にたった一軒だけある、スーパーマーケット、虹の谷ストアのお話です。

虹の谷ストアにある日注文のファックスが入りました。

「えんぴつ けしごむ のおと」それだけが子どもの字で書いてあるのです。名前もありません。ファックスに自動的に打ちこまれている番号は、茶店の一人暮らしのおばあちゃん、佐久間さんのものでした。でも、佐久間さんはそんな注文はしていないと言うのです。配達係のあきのりさんは首をかしげました。いったいファックスを送ったのはだれなのでしょう。

 

◎とっちやまんのここに注目!

いいじゃん、いいじゃん、このストーリー。なんともいいふんい気がある。人間の世界に○○○(読んでいない人のために秘密にしておくね)がやって来ても、まったくわざとらしさがないよね。

佐久間のおばあさん、虹の谷ストアのあきのりさん、そして、なぞの男の子。みんな、とってもいい感じだ。ボクのむかしのクラスメートにも、きっとタヌキやキツネや○○○がいたんだろうなと、ふと思い出してしまったよ。

 

・消えた村、そして虹の谷の村

ボクの生まれたところも、この山の村のようなところだったんだよ。ピンとこない子もいるだろうけれど、もっと山おくには、買い物なんてめったにしないでくらしている人もいた。ヘビにイタチ、ときにはクマだって、すがたをあらわした。今は、そこに人はいなくなってしまった。つまり、村は消えてしまった。では、そこが、生き物にとっての天下になったかといえぱ、それもちがう。地球はどんどん、生き物にとって生きにくいところになっているような気がするな。

けれども、この物語の風景は、すーっとむねに入ってくるね。この村がどこにあるかはわからないけれど、きっときっとどこかにあるという気がする。

この作品、そのまますなおに楽しみたい作品だね。「いいなあ」って。「こんなことあるわけないじゃん」じゃ、意味ないぞ~。さて、すなおに読んだとき、きみのむねには何がのこるかな。

 

・物語の中に入ってしまおう

きみにまず考えてみてほしいこと、それは、この物語の作者が「何を伝えたいか」ということではなく(それも大切だけどね)「どういう世界を描こうとしているか」ということだ(これ、ちょっと大人っぽい読み方だよ)。そして、その世界にすーっと入りこめたら、最高だ。

 

・作者のメッセージは?

ダムに沈んだ村、谷の池にかかる虹、さびれていく村。人と生き物が共に生きている村。そこには、電話やファックス、ワゴン車など、近代の装備もある……。うーん、複雑な気持ちになるね。

必要なものだけを注文してひっそりとくらしている人、品物を届ける相手の顔を思いうかべて配達をする人、春を待ちながら、その日その日を生きていく人。ここには、たしかに人の生活がある。

どうだい?こんなふうに見ていくと、作者のメッセージが感じ取れるような気がしてこないかい?

人が生きていくうえで大切な環境、大切なものってなんだろう。考えてみてほしい。

 

 

※上記の著作権は宮川俊彦にあります。
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※出典:読書感想文おたすけブック(2002年)