「人は言葉で作られる」。これは覚えておくといい。人の心も、考えも、人格も、言葉で作られている。
君にとって、忘れられない言葉がきっとあるはずだ。心に響いた言葉でも、カチンときた言葉でも、なんだっていい。君がその言葉を覚えているなら、その言葉が君の生き方や姿勢を育て、今の君を作っている。
◇本は先人の知識の宝庫
人は言葉を発明し、文字を発明し、それを書き残すことを発明した。そして言葉を使って進歩を果たしてきた。科学でも、歴史でも、人が見い出したことを言葉にし、その言葉を伝えることで進歩した。
本はそうした先人の知恵でできている。そこには、先人たちの世界のとらえ方、つまり世界認識が書いてある。ぼくらは本を読んで、それを学ぶ。
何で学校には図書室があるのだろう。それは、そこが人の知識の宝庫だからだ。もしも、図書室の本を全部読んだら、相当な学習ができる。
本当なら、世界中の本を古代から全部読んだらいい。ボクはそうしたいと思っている。ただ生きていられる時間と引き合わない。
◇本を対象化する
本を読むときは、その中に飛びこんで没頭しよう。ファーブルの昆虫の世界に、海底2万マイルに、宇宙に……。
そうして読み終えたら、今度は本との間に距離を置くんだ。そして、「いったいこの本は……?」と考えるのだ。これが「本を対象化する」ということだ。
距離を置く時間がないと、ただ本にとらわれるだけになる。そんな時もあってもいいけれど、しかし、ボクは「あえて対象化しろ」「机の上に本を置いて、腕を組んで、距離を置いて考えろ」と言いたい。それが読者としての誠意だ。
言いかえれば、君は本と対話をしなければならない。
そして、君は自分の今の考え、問題だと思っていること、これでいいとしていることについて、本と対決していくんだ。
そのためには無理でも、本を対象化し、本と向きあわなければならない。
※上記の著作権は宮川俊彦にあります。
※無断での転用・転載を禁じます。
※出典:読書感想文書くときブック(2010年)