谷川晃一・作 / 童心社
はじめはなんのことだかさっぱりわからなかった。読んでいくうちに、オヤオヤなるほどぉ。感心してしまった。
いやはや、とっちゃまん、それからというもの、しょっちゅう「ウラパン」「オコサ」とあちこちで言いまくっている。
「すみませーん。ざるソバをウラパン!」
あいてはなんのこっちゃ。ですよね。そのソバやさんにもこの本を見せた。「わかった、わかった」。それからというもの、けっこうこの「記号」が通じてしまっている。
ケッサクだよ。きみもやってみるといい。「ママぁ、おにぎり、オコサねぇ」とかさ。
つかえる。おもしろい。一つ、二つなんていつもどおりやっているよりも もっと楽しい。
いろんなふうにおきかえていくことができるんだ。ウラパンが「おかめ」でもいいんだ。オコサが「ひょっとこ」でもいいんだ。
でもそれはみんなが知っていてはじめて通用していくよね。自分だけで楽しむのならそれはそれで楽しい。
ここに「ことば」のふしぎ、「記号」のふしぎがあるんだ。そのひみつをちょつとのぞいて見てしまったという感じがあるよね。
【きまり】
学校では、というかこの世の中では、一つは「ひとつ」、二つは「ふたつ」。そうでなければ「1」とか「2」だよね。そしてそこから数がじゅんにふえていって、1・2・3・4・5・6・7・8・9・10・11・……、とつづいて いく。
これはよく見みると1から10までいって、そしてこんどは11から20までいく。さらに10が10こあつまると100になって、101からまた同じようにふえていく。
このきまりで数の世界ができ上がっているんだね。
おもしろい数えかたを考えたものだよね。
でもさ、考えてみれば、これとはちがう数えかたがあってもいいんだよね。
そこでこの本の出番。
『ウラパン・オコサ』の登場。これでもいいんだ。こんな方法もあるんだ、ってことだね。
さてさてさて、読んでいくとおもしろいことに気がつく。
3をあらわすには「オコサ・ウラパン」、4は「オコサ・オコサ」、5は「オコサ・オコサ・ウラパン」ということになる。これらをよく見てみると「きまり」があることがわかるね。1は「ウラパン」、2は「オコサ」。3は2と1だから「オコサ・ウラパン」。4は2と2だから「オコサ・オコサ」。5は2と2と1だから「オコサ・オコサ・ウラパン」となっているんだ。つまりつかうのはこの二つのことばだけ。これだけで、きっときっとぜんぶの数をあらわすことができる。
それでは、「50」をこの「ウラパン・オコサ」法であらわしてみようよ。
こんなことを話しながら、「もうたいへんなんですから」なんて言って、感想文に入っていくことができる。ま、くらべていくことができるということだよね。
【「ウラパン・オコサ」法】
じつはね、コンピューターでは、0と1の二つだけで数をあらわしていくんだ。
1は「1(イチ)」、2は「10(イチ・ゼロ)」、3は「11(イチ・イチ)」、4は「100(イチ・ゼロ・ゼロ)」、5は「101(イチ・ゼロ・イチ)」、っていう感じ。こうすると、「0」と「1」だけでどこまでも数えていってしまうことができるんだ。
この本ではそれを「ウラパン」と「オコサ」という二つのことばにおきかえているっていうことさ。
【数字は「ことば」だよ】
算数キラーイ、なんていう人はいるかなぁ。あの数字を見るとイライラしてきちゃうという人もいる。
でもね、じつは、ジャーン!数字は「ことば」なのです。「んなモン、あったりまえジャン」と言われたら、ボクはガクッ。
数字や記号にはい(・)み(・)があるんだよ。
いみ(・・)があるから、「ことば」なんだね。
それをこの本で実験してるんだよ。
たとえば、「○十△」の「十」は「足す」「プラス」というだけじゃなくて、「出会う」「なかまになる」「いっしょになる」「せなかにのる」「あくしゅする」「つながる」……といった、いろいろなことばにおきかえていくことができる。
「ウラパン・オコサ」の「・」も「十」とおなじと考えることができるね。
そういうところに目がいけば、この本はいい教科書になるかもしれない。
「ボクの兄弟はオコサです。家ぞくはオコサ・オコサ・ウラパンです」。こんな書き出しの感想文ができるんじゃないかな。
【数えきれないよ!】
これいいねぇ。たいへんだものね。アフリカのどこかの人たちのあいだでは、数が5までしかなくて、あとは「いっぱい」なんだそうだ。
ぜんぶわかりたい、いくつか知りたい、というのが数の考えかた。でも「いっぱい」と言ってしまうのもりっぱな数の数えかただよね。わらってしまったけれど、心の中ではウームと考えこんでしまった。
「世の中に数はどれくらいあるでしょう?」
「むげん」というのもにているよね。
わかりたい。知りたい。
そうなんだ。ボクらはなんでも知りたいんだ。
なぜ数を数えようとしたのか。いくつあるって知ろうとしたのか。ここにきみの考えがむかうとおもしろいよ。
とてもふかい感想文ができ上がる。
パパやママに聞いてみるのもいいし、話しあってみるのもいい。数を数えるようになったわけやようすを考えて、書いていくというのもいいよ。
この本は多くのことをボクたちに教えてくれる。またいろいろなことを考えさせてくれる。なにを引っぱり出してもテーマになるように思う。
「サルがかわいーい」。これもいいんだ。
「ボクはボクなのに『一人』って数えられる。つまらないな」というのもおもしろい。
「じこで何人なくなりました」ってニュースで言うね。こういう時って「人は数であらわされてしまうんだぁ」ということを考えていくのもおもしろい。
いくらでも考えをふかめていくことができるし、広げていくこともできる。
数は1、2、3、と言うだけじゃないんだよって、きっと作者は思っている。こんなだと算数は楽しいな。
ま、がんばって読んでみようよ。
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