村(むら)のおばさんのバケツからこぼれた水(みず)のしずくが、にわのほこりにまみれてよごれてしまう。しずくは、もとのようにきれいになりたいと思(おも)い、ぼうけんする。いってみればただそれだけの話(はなし)。でも、どこにでもはいりこめる水(みず)というものに、目(め)をつけたのがおもしろい。
◎水(みず)はさまざまなもののなかに流(なが)れている。海(うみ)の水(みず)や、川(かわ)、雨(あめ)、すいどうの水(みず)だけではなくて、木(き)のなかや、土(つち)のなかにもしみこみ、流(なが)れていく。人(ひと)のからだだって、ほとんど水(みず)からできている。たとえば、君(きみ)の流(なが)したなみだが、どのような世界(せかい)を旅(たび)していくか想像(そうぞう)してみればいい。君(きみ)ののんだジュースが、からだのなかをとおってあせになって空中(くうちゅう)にとけて、雨(あめ)や雪(ゆき)になるかもしれないし、おしっこになって、トイレから流(なが)れだし、げすいどうをとおって川(かわ)や海(うみ)の水(みず)になり、さかなのおなかのなかにはいっていったり……。もしかしたら、いま君(きみ)がのんでいるジュースだって、ずっとまえには、君(きみ)のおしっこだったかもしれない。水(みず)になって旅(たび)してみよう。
◎なんでみんな、きれいにしたがるんだろう。せんたくをしたり、そうじをしたり、おふろにはいったり。また、へやをちらかしたりすると、「何(なに)やってんのよ!ちゃんとかたづけなさい!」とおこられたりもする。
◎雨(あめ)がふったあとに、空気(くうき)がきれいになる。これを考(かんが)えるとおもしろい。また、ぞうきんのようによごれをぜんぶすいとることのほうが「きれい」なことかもしれない。しずくを、人間(にんげん)のこととして考(かんが)えてみよう。きれいになるとは、どうなることをいうのだろう。
◎水(みず)たまりの水(みず)は、すぐにくさってしまうけれど、いつも流(なが)れている川(かわ)の水(みず)は、くさることがない。人(ひと)の一生(いっしょう)を水(みず)や川(かわ)の流(なが)れにたとえることが多(おお)い。君(きみ)も考(かんが)えてみよう。そのためには、まず水(みず)のせいしつを、いろいろと調(しら)べることからだ。
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※出典:きみにも読書感想文が書けるよ
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しずくのぼうけん
マリア・テルリコフスカ・作 ボブダン・ブテンコ絵 / 福音館書店
うちだりさこ・訳