はるか昔、人間と妖精達がまだ共存していた時代、「ホビット」とよばれる小人族がいた。このホビット族のビルボが、甥のフロドに全財産を譲るところから長い長い物語が始まる。
財産の中には、暗黒の国モルドールの王・サウロンによってつくられた魔法の指輪があった。その指輪の持ち主は全世界を支配する力を得るが、やがて指輪に支配されるようになるという。
魔法使いのガンダルフから指輪の秘密を告げられたフロドは恐ろしい指輪をこの世から消滅させる決心をする。
そして、唯一その指輪を破壊する事ができるモルドールの火を目指して、住み慣れた美しい村を旅立つのだった……。
◎とっちゃまんのここに注目!
映画化されて、話題になった作品。どうも世の中は魔法ブームらしいね。そこでボクは考える。なぜ、今、魔法がブームになるんだろう?もしかしたら、現代という時代は何かを失っているのではないか?だからみんな、魔法や魔法の世界を求めているのではないか?あるいは、世の中が現実性を失ったから、魔法がブームになったのか?みんな、魔法と現実との区別がつかなくなって いるのか?
何かがブームになったら、そのブームの背景となっている時代の意識のようなものをしっかりつかんでおくべきだと思う。『指輪物語』は長く読みつがれてきた名作だけど、今の時代ならではの読み方というものがあるはずだから(ちょっと難しい話をしてしまった)。
さて、と。『指輪物語』は、世界中で一千万以上の読者を夢中にさせてきた長編ファンタジーで、『旅の仲間』『二つの塔』『王の帰還』の三部作。とにかく読みごたえがあるぞ。
・指輪
指輪や宝石には、魂とか、何か不思議なものが宿るという気がする。この物語に出てくる不思議な力を持っている指輪のことをボクは少しも疑わない。
「あるよ、こういうこと」って思う。というか、この指輪の存在を信じなければ、『指輪物語』の世界には入りこめないよね。
おもしろいセリフがあった。「指輪が自分の意志で落ちて、そして拾われたんだ」。これ、とっても意味深だよね。そして、その意味深さが、物語全体をつらぬいていく。
・奥座敷へ
この物語は、歴史の、人の目には見えない領域にふみこんでいるという感じがする。まるで神話の世界だ。そして、そのひとコマひとコマが、とても魅力的だ。「おっ」と思う言葉やフレーズもたくさんある。
そういうものたちに導かれて、この本にふみこんでいくと、人間の本質に行き着きそうな予感さえする。ハリー・ポッターの物語などとは異質の奥座敷が用意されているんだ。気がつくと、その奥座敷に引きずりこまれている。
・さて、ポイントは?
この物語のテーマとは何だろう?まずそこにメスを入れてみたい。まず、「善」と「悪」の戦いという構図がある。それから、「進んで運命を受け入れ、しかも、自ら運命を切り開いていこうとする大切さ」、これもありだよね。ここを追求していくと、正統派の感想文が書けるはず。
フロドのおそれやおびえ、それらがどう変化していくかも要チェックだし、フロドとガンダルフのかかわりや、タイトルになっている「仲間」関係に注目してもいい。
そして、問題の指輪。「これはいったい何なんだ?」、だよね。だって、 指輪はただのモノなんだよ。それなのに、たった一つの指輪が人を変え、時に人をくるわしていく。この指輪はなんの象徴なんだろう?きみなりに解明してみてほしい。
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※出典:読書感想文おたすけブック
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指輪物語1―旅の仲間
J・R・R・トールキン・作 瀬田貞二・田中明子・訳 / 評論社