ピート・ジョンソン・作 岡本浜江・訳
ささめやゆき・絵 / 文研出版
新しい学校の一日目。よぼよぼのじいさんが出てきて、自分は校長だと言い、やたらツバキを飛ばしながら、この学校に来られて運がいいと四回も言った。担任の先生は、学校の名誉になるような生徒になれと言った。でも、無理だろうって顔をしていた。放課後になると、クラスのほとんど全員が、おかしなものを習いにせかせか帰っていく。
ぼくはどうやら、とんでもない〈ガリ勉村〉に越してきたらしい。やがて、父さんと母さんまで周囲に影響されてきて……。悪夢だ!地獄だ!人権侵害だ!このままでは、人生を破壊されてしまう!
こうして、ルーイの自分救出作戦、〈両親のしつけプログラム〉が始まった。
ルーイは人生最悪の日日から脱出できるのだろうか?
◎とっちゃまんのここに注目!
おもしろいタイトルだね。ちょっとタイトルについて考えてみようか。
もしも親がまちがったことを言っていたら、そのまま受け入れてしまうのはよくないよね。まちがいを正すことも必要だ。
たとえば、「勉強さえしていれば、えらくなれる」と言われたら……。これもひとつの考え方かもしれないし、親の心配もわかるけれど、勉強は、教科の勉強だけとは限らない。世の中の仕組みや世界の動き、人間としての生き方を知るのも勉強。ガリ勉ばかりしていて、テストの成績は良くても人間としてはスカスカなんて、イヤだものね。そこで、ボクらは反論を試みる。「親をしつけよう」というわけだ。
この本でも、親と考え方の違う主人公が、親をしつけながら、自分の夢をかなえようとしている。とすると、タイトルの「親をしつけよう」というその意味は……親の思いこみを正すため?自分の生き方を通すため?それとも、自分を理解してもらうため?
こんな問いを頭に置きながら、読解にチャレンジしてほしい。
◎子どもの気持ち、親の気持ち
まず、ルーイが大切に思っているものは何か、両親が大切にしているのは何かを、明らかにしよう。両者の違いをしっかりつかむこと。そしてそこに、きみの意見や、きみの両親の意見などを重ねてみるといい。これが読解のポイント。
もしもきみがお笑いタレントになりたいと言ったら、家の人はどう反応するだろうね。「バカなことを言っていないで勉強しなさい」とか、「大学まで行ってから考えなさい」とか……?何と言われるか、想像してごらん。これはそのまま、主題へのアクセスになる。実際に相談してみて、両親の反応を見てもいいかもしれない。この場合は、後でちゃんと「ごめんなさい、取材だったんだ」とあやまってくれよ。
・ルーイの生き方
自分の才能を生かすことができたら、うれしい。けれどもそれは、並たいていのことではない。血のにじむような努力の先に、才能という言葉がチラッと見えてくるという感じかな。才能って、もともとあるものというより、作り出し、積み上げていくものだと思うんだ。自分が選んだ道を突き進むことも条件になる。
そんな観点から、ルーイのことを見てみよう。演技の練習、オーディションを受けること、両親を説得すること――やるべきことをやって、希望を才能に変えようとしているよね。この主人公の生き方についても、きみの感想や意見がほしいな。
・批判だってオーケー
生き生きしていて、前向きな作品。日本の作品にはない力強さがあるよね。日記形式もおもしろかった。
しかし、率直に言うと、饒舌かなと思うところもあった。文章って、「そぎ落とす」ことも大切だと思うんだ。これはボクの感想だけれど、感想文には、そんな正直な感想があってもいいんだよ。ルーイの生き方を批判の目で見てもいいし、作品自体を批判してもいい。
感想文はきみの論文。きみらしい展開にチャレンジしてほしい。
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