いえでででんしゃ

「きらい、きらい、大きらい。ママなんか、大きらい。」

ママからムジツのツミでしかられたさくら子は家出した。九年間生きてきて、初めての家出だ。暗くなっても、寒くても、おなかがすいても帰らない、ほんとの家出だ。

夕ぐれの駅に入ってきた変な電車は「いえでででんしゃ」。家出する子はただだというので、さくら子は「いえでででんしゃ」に乗りこんだ。

発車まぎわ、しまりかけたドアから飛びこんできたのは、となりのクラスのおがたけいすけくん。さくら子とけいすけくんを乗せた「いえでででんしゃ」は、どこへ行くんだろう?

 

◎とっちゃまんのここに注目!

きみは家出したことある?ボクはある。おなかがすいて、三時間で帰ったけどね。もしかしたら、だれでも一度は家出したいと思ったことがあるかもしれない。だからというわけでもないけど、この話の感想文は、きみの体験をまじえて書くといいんじゃないかな。

「わたしも『いえでででんしゃ』に乗ったことがあります」なんていう感想文ができたりしてね。うん、この書き出し、いいかも。

主人公のさくら子は三年生。さくら子と自分とをくらべる作戦もあるね。

 

・いえでででんしゃ

「いえでででんしゃ」、これがおもしろい。行きたいところに行ける。しかも、ただ。いつもきみのそばを走っていて、帰りたくなったら一気にもどる……。この電車の正体は何だろう?さぐってみよう。

それから、車しょうさんもおもしろいよね。この人、いったい何なんだ?とっても大切な役のような気もするし。きみはどう思う?

 

・家出の理由

さくら子は空から町を見て、「こんなにちっちゃな町だったんだ」って言う。このセリフ、いいなと思った。ちっちゃな世界のちっちゃなことで、ボクたちはなやんだり、おこったり、悲しんだりしているんだよね。

さくら子も、チョウゲンボウも、リュウグウノツカイも、家出の理由を語っていた。ムジツのツミを着せられたとか、がんばったからほめてほしかったとか、ぼんやりしているって言われたとか。理由はやはりちっちゃなこと。でも、そのささやかなことが、そのときの自分には重いんだよね。

ところで、理由はささやかにしろ、重いにしろ、なんで家出しようなんて思うんだ?これ、ボクからの問題。深~く考えてみてほしいな。

 

・行きたいところはどこ?

さくら子はどこに行きたかったんだろう?な~んて、じつは、家出をした人に「どこに行きたいの?」と聞くのはスルドイよね。家出って、家から出るのが目的で、どこかへ行こうとしているわけじゃないんだから。行きたいところは本人にもわからなかったりする。

結局、さくら子も帰ることになった。何で?さくら子の心の変化は何によって起こったんだ?これもきみのメスを入れてほしいところだよ。

 

ボクはさくら子が心配だった。無事でよかった!だけど……さくら子もみんなもいつか家を出る。家出じゃなくね。いつまでも親といっしょということもないんだ。きみのママやパパも、もしかしたら家出したり、親とはなれたり、新しい家族を作ったりと、いろんな道を通ってきただろう。

ママやパパの話を聞いてごらん。そんな取材をしながら、「家出の研究」をするのもいい。でもこれ、「家出のススメ」じゃないよ。

 

 

※上記の著作権は宮川俊彦にあります。
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※出典:読書感想文おたすけブック(2005年)

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いえでででんしゃ    

あさのあつこ・作 佐藤真紀子・絵 新日本出版社