全国からたくさん参加してくれたこの間の特講では、すごい意見が飛び交ったんだよ。
言葉について「それはね、自分の言いたいことをここまでにしておこう、この先は言いたくないよ、というように秘密をつくり、それを守っていくために
あるんじゃないかな」という意見があった。おもしろいよね。そして鋭いところをついている。
そう言ったのは小学4年生の子だったと思う。
そうしたら、もう一人が突然言いだした。
「そうだろうと思う。そして言葉ってね、その人の秘密をあばいたり、その人の隠そうとしていることを明らかにしていこうというふうにしてもあるんじゃないかな」って。
ここからまた議論は進んでいった。
君、どう思う?
そうかもしれないね。何でも言いたいことが言えてしまったら、人は秘密を失っていくかもしれない。思い浮かんだことが、全部相手に伝わってしまう薬があったら、きっと初めは混乱してケンカになっていくし、自分をとざしていってしまうだろう。けれど、だんだん考えたり思ったりがなくなっていくか、さもなくば言葉がなくなっていくかもしれない。ボクたちは自分にこだわり、「自分は」と思うことによって、言葉を道具として使っているのかもしれない。
こんなふうに考えていくのは楽しいよね。当然に、とか当たり前なんていうことはないんだ。世の中で決まりきったことだというようなことを、いつから考え直していくかということが、ぼくたちにとって大切なことのように思う。
もっともそうしなかったら、文化はここまで進んできていない。
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※出典:ザ・読書感想文‘96(高学年向け)