ぼくらの地図(ちず)旅行(りょこう)

地図(ちず)とじしゃくがあったら、どこにだって行(い)けると言(い)ったシンちゃんは、クラスのみんなのまえで、野(の)浜(はま)の岬(みさき)まで地図(ちず)旅行(りょこう)をすること、をやくそくしてしまう。そしてシンちゃんはタモちゃんをなかまにひきいれ、ふたりの地図(ちず)とじしゃくをたよりの旅行(りょこう)をはじめた。

◎ふだんなにげなくあるく道(みち)、よくかいものに行(い)くスーパー。出(で)かけてゆく君(きみ)の小学校(しょうがっこう)、ゆうびん局(きょく)、そんなたてものが地図(ちず)でみるとどこにあって、自分(じぶん)の家(いえ)とどのくらいはなれているかわかるね。わかるための見取図(みとりず)。どうしてこうしたものを作(つく)ったのかな、と考(かんが)えるとおもしろい。

◎地図(ちず)を見(み)て、そのじっさいのまちのようすを想像(そうぞう)してみる。まったくしらないまちの地図(ちず)を見(み)て、こんなまちでは、どのような人(ひと)がいて、どのようなくらしをおくっているんだろうか。目(め)をつぶって、あたまの中(なか)にその人(ひと)たちの生活(せいかつ)している場面(ばめん)を思(おも)いうかべてみよう。

◎地図(ちず)ってやっぱりべんりなもの。だって、飛行機(ひこうき)で空(そら)からうつした写真(しゃしん)を見(み)ても、山(やま)の高(たか)さなんかわからないし、たてものにしても、ぜんぶおなじものに見(み)えたりして、どれが学校(がっこう)で、どれがびょういんだか見(み)わけがつかない。そのてん、地図(ちず)は、いろんな記号(きごう)によっておきかえられている。等高線(とうこうせん)やしゅくしゃくなどで山(やま)の高(たか)さや、きょりも正(せい)かくにわかる。これは記号(きごう)のおかげでもある。人(ひと)が話(はな)すことばだって、だれかに自分(じぶん)の思(おも)っていることを、あらわし、伝(つた)えるための記号(きごう)なんだ。ことばのない人間(にんげん)の心(こころ)のなかなんて、地図(ちず)記号(きごう)もなくうっそうとした山(やま)やまや、ごみごみしたビルがうつっているにすぎない航空(こうくう)写真(しゃしん)みたいなものかもしれない。記号(きごう)のやくわりって何(なに)かを、考(かんが)えてみよう。

◎いろんな地図(ちず)。地図(ちず)はなにも、君(きみ)の家(いえ)がどこにあるとか、学校(がっこう)がどこにあるとか、ただ場所(ばしょ)をあらわすためのものでなくてもいい。たとえば、色(いろ)のついた地図(ちず)とか、音(おと)がする地図(ちず)とかね。このまちのこのへんは、にぎやかそうだから、赤(あか)とか、このへんは、何(なに)もなさそうだから白(しろ)とか。また、犬(いぬ)のからだを地図(ちず)に見(み)たてて、そのなかを旅(たび)する話(はなし)とかかいてみるとおもしろい。図(ず)にしたものをひっくるめて考(かんが)えると、ターゲットが広(ひろ)がるぞ。生活(せいかつ)も人生(じんせい)も同(おな)じ。

◎上(うえ)からの目(め)で、ものをみてみよう。地図(ちず)をつくるように、ものを見(み)たり、考(かんが)えたりするときそうやって上(うえ)から見(み)るよゆうのある目(め)がほしい。たとえば、学校(がっこう)のなかで生活(せいかつ)するのだったら、生徒(せいと)のがわからだけ考(かんが)えるのではなく、先生(せんせい)のがわ、校舎(こうしゃ)のがわ、時(とき)のがわ、歴史(れきし)のがわからも考(かんが)えてみる。ボクだったら、こんな楽(たの)しいじゅぎょうをしてみる。みんなのけんこうを考(かんが)えて、さんすうの時間(じかん)をたいいくにしちゃう。とか。もっと上(うえ)からだって見(み)られる。もしも、ボクがそうりだいじんだったら、もしもボクが神(かみ)さまだったら、どんなことを・どういう目的(もくてき)があってするだろう。いろいろな「上(うえ)からの目(め)」を考(かんが)えてみるといいね。

◎旅(たび)は人(ひと)を大(おお)きくする。このはなしに出(で)てくるふたりも、地図(ちず)とじしゃくをたよりに旅(たび)をつづけるうちに、どんどんたくましくなってゆく。さいごには、おたがいにいたわりあい、友情(ゆうじょう)がよりふかまる。旅(たび)って何(なん)だろう。人(ひと)の一生(いっしょう)というのも旅(たび)だ。じゃあ地図(ちず)って何(なん)だろう。

 

 

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※出典:きみにも読書感想文が書けるよ

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ぼくらの地図(ちず)旅行(りょこう)

那須正幹・作 西村繁男・絵 / 福音館書店