つかむ、気(き)もちをあらわす、つりあいをとる、ささえる、かじとりのやくわりをする、およぐ、身(み)をまもる……。しっぽというもの一つにもさまざまなやくわりがある。
◎人間(にんげん)にはしっぽがない。なぜだろう。大(おお)きくわけると、二つの考(かんが)え方(かた)ができる。まず、一つには、しっぽが必要(ひつよう)ではなくなったから。もう一つは、ほかのものが、しっぽのかわりのやくわりをしたから。
何(なに)がいらなくなって、何(なに)がしっぽのかわりをしたのか考(かんが)えてみよう。
◎人間(にんげん)はサルから進化(しんか)したといわれているが、それならば、なぜ人間(にんげん)になれなかったサルができてしまったんだろう。ゴリラやチンパンジーは、いつかは、人間(にんげん)のような生(い)きものに進化(しんか)するのだろうか。人間(にんげん)とサルとは、何(なに)がどうちがうのか、ちょっと大(おお)きな目(め)で考(かんが)えてみよう。「進化(しんか)=人間(にんげん)」、「おちこぼれ=サル」という見方(みかた)もいい。
◎人間(にんげん)も、どんどん進化(しんか)していくのだったら、未来(みらい)の人間(にんげん)というのはどんなふうになっていくんだろう。必要(ひつよう)でない部分(ぶぶん)がだんだんなくなっていくんなら、手(て)や足(あし)がだんだん小(ちい)さくなっていき、頭(あたま)だけがでっかくて、全身(ぜんしん)ツルッパゲになっていくかもしれないね。
◎かたちあるものは、ただ、みためのうつくしさだけではなくて、そのやくわりにそったいみがある。たとえば、スポーツカーや、ジェット機(き)などのスマートなかたちは、よりはやくすすむために必要(ひつよう)なものだし、キリンのくびが長(なが)いのは、高(たか)いところにある木(き)の葉(は)を食(た)べるためのものだ。さまざまなかたちをとおして、それがなぜそのかたちになったのかということを、そうぞうしてみよう。
◎人間(にんげん)はしっぽだけではなく、よく見(み)える目(め)、小(ちい)さな音(おと)までよくきこえる耳(みみ)、かたいものをかみくだくきばなどを、長(なが)いれきしのなかでうしなってきた。人間(にんげん)がこれまでに、うしなってきたもの、あるいは、えたものはなんだろう。君(きみ)は、人(ひと)にしっぽがないことにかなしみを感(かん)じるか、よろこびを感(かん)じるか。
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※出典:きみにも読書感想文が書けるよ
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しっぽのはたらき
川田健・文 薮内正幸・絵 今泉吉典・監修 / 福音館書店