吉野万理子・作 宮尾和孝・絵 / 学習研究社
六年生の浦和大地は東小卓球部のキャプテン。小学校最後の試合になる大会で、最強のダブルスを組みたいと願っていたのに、なぜか五年生の純と組むことになってしまう。
いちばん強いはずの自分が、なぜ弱いやつと組まなければならないんだ?
中学に入っても卓球を続けるかどうかをうらなう大事な試合なのに、絶対に勝てない相手と組むなんて!どうしても納得できなくて、大地は落ちこむ。
そんな時、大地の家で「それどころではない」事件が起きる。
卓球部、キャプテン、引退試合、家族、大切なものを失ってしまうかもしれない……。これから、どうなるんだろう……。大地の前には、乗りこえなければならない厚いかべが立ちふさがっていた。
◎とっちゃまんのここに注目!
卓球に打ちこむ大地が主人公。卓球部のあれこれや家族の問題をじくに、大地と大地を取り巻く人びとのドラマが展開されていく。
ボクはさ、ある場面で不覚にも泣きそうになってしまったんだ。照れくさいからくわしくは教えないけど、ヒントは「穴」。きみはどこで泣いた?
・八イレベルな感想文のために
クールなボクにもどって、ちょっと構造的な話をしよう。
日本の高度成長期には、野球、ボクシング、バレーボールなど、スポーツもののマンガやドラマが大流行していた。「巨人の星」はその代表作だね。「少年マンガの三大テーマはスポーツと勇気と友情」と言われていた時代もあったな。ここまでは、前置き。
スポーツには目標があって(次の大会に向けて、みたいなね)、そこに向けてがんばる必要がある。練習とか、自分との戦いとか。目標達成までには、ケガや人間関係のもめごとなど、さまざまなトラブルも起きる。
スポーツドラマには、そうした数数のハードルを乗りこえていく過程がえがかれている。そしてストーリーは、最終的には「いよいよ大会の日」という設定に行き着く。だからじつは、「何が」→「どうなった」、「テーマは○○だ」という構造がつかみやすいんだ。
どうしてこんな話をするかというと、このしくみがわかっていると、感想文的な読解や分析がラクになるからだ。何をして、何がどうなったか、そこから考えられることは何か、テーマは何か。こう考えれば、感想文はばっちりのはずだ。
この方法の落とし穴は、人と似通った感想文ができやすいこと。だからきみは、きみならではの着眼点を持たなくてはね。何に着目するか?どう切りこむか?これがオリジナルな意見を導くポイントになる。
・テーマと切りロはこれだ!
まずは「家族」、これはやはり、じっくり考えたいテーマだね。母さんは、「家ぞくなんだからいっしょにがんばって乗り切ってほしいな」と言う。「父さんと母さんは、ふたりで一つのチームなの」とも言う。これだね!
ふだんは見えないことが、何かが起こって初めて見えてくる。何かがあるとガタガタになってしまう家族もあれば、こんな時だからと助け合う家族もある。家族のきずなは、困難を乗りこえるたびに強まるものなのかもしれない。もしかしたら、いつも楽しいだけの家族には、本当の幸せや楽しさはわからないのかもしれない……。親は、きみにはとことん幸せでいてほしいと願っているから、こんなことを言うと悲しむだろうけれど、きみ自身にはこんな視点もほしい。
「ダブルス」も読解のキーワードになる。これは、『チームふたり』というタイトルの読解にもつながるね。大地と純のダブルス、父さんと母さんのダブルス、大地と人生のダブルス……いろいろなとらえ方ができるだろう。
「卓球」もキーワード。球が打ちこまれる、それを受けて打ち返す。球は言葉だったり、心だったりする。そんなふうに置きかえてみるといい。
大地のセリフを細かく切ってみる、心に残ったフレーズを探す……切り口はまだまだたくさんある。的をしぼって、つっこんだ読解をするといい。サービスエースを決めよう!
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※出典:読書感想文おたすけブック(2008年)