デモナータ3幕<スローター>

ロード・ロス、それは悲しみを糧にする悪魔。悪魔の中でもとりわけ強い  魔力を持つ魔将だ。

デモナータという地獄行きの切符を手に入れたダービッシユおじさんは、 ロード・ロスと命がけで対決することになった……。そしておじさんは、ある朝突然もどってきた。消し去ることのできない悪夢をたずさえて。

ぼく、グラブス・グレイディは、デモナータで何があったのか知らない。  「おじさんはロード・ロスに勝ちました。めでたし、めでたし」ならいいの  だが、人生はおとぎ話とはちがう。生きているかぎり、先がある。その先が  耐えがたいもの――新たな悪夢、そして、新たな戦いの日日――であっても。

恐怖の第三幕の幕が今、上がる!

◎とっちゃまんのここに注目

人気シリーズの三巻目。われらがグラブスは今回も元気だ。前作も刺激的 だったけど、今回もかなりのもの。「ハリポタ」的世界ともいえるし、究極のホラーともいえるね。

このストーリー、実在する人物の名前や場面をたくみに織りまぜているから、

自然に読み進められるし、知り合いのだれかの話にじっと耳をかたむけているような感覚になる。ストーリーにすーっと引きこまれて、気がつけば、物語の世界。ストーリーのとりこになれる本だね。

さて、ボクから提案。文中から、「これは大切なメッセージだな」という   フレーズを拾い出してみるといいよ。

「息をしているかぎり、人生の物語に終わりはないのだ」、「変わらないものなど、ないはずだからな……」なんていう文もある。ダレン・シャンって、そうとうクールだよね。

それはともかく、こういう文に着目すると、味のある読み方ができるんだ。話の筋も読むけれど、言葉のおくも読んでいくというやり方だね。この本には「ほーっ」と思わせられる機知に富んだ言葉やセリフがちりばめられているから、そういう言葉に出会うことも醍醐味(だいごみ、と読むよ)。本の読み方のひとつとしてつかんでおいてほしい。

・悪魔とは?

キリスト教の国では、ボクらが想像する以上に「悪魔」という存在や考え方が定着している。その像は、日本でボクらが思いえがく悪魔のイメージよりも

はるかにあざやかなんだろうと思う。

人の憎悪や苦悩を好むという悪魔は、つねに神の対極の存在としてあるということなんだろう。神もまた、悪魔の存在によって正しさを証明できる。

この物語に出てくる悪魔もグロテスクでこわい。では、なぜ人はそういう 存在を作り出そうとしたのだろう。悪魔が「いる」というべきか、人が悪魔を「作り出した」というべきか。

「悪魔は」、「なぜロード・ロスは」という視点で考えてみると、深いテーマに行き着けそうだ。「なぜグラブスは」とか、「なぜおじさんは」という   視点よりも、ふみこんだ考えに向かえると思うよ。

意識的にストーリーと距離をおいて、この本の世界をながめ、考えてみよう。感想文はそうして得た意見を前面に押し出して書くといい。

・「悪い」とは何か?

世界は今も戦争やテロや憎悪に満ちている。これらはよく「悪魔のしわざ」とされるよね。「悪魔に魅入られた」とかさ。

悪魔は悪い。それはそうだろう。でも、なぜ悪いのか?悪いとは何か?あるいは、悪とは何か?そんな疑問を持って考えていかないと、いつしかこの世界や人間社会を冷静に見つめる視点をなくしてしまいそうだ。

悪、悪魔、魔術、キリスト教、戦争。いろんな本を読んだり、材料を集めたりして、感想文にチャレンジしてみたらどうだろう。「デモナータ」のストーリーは、いま10幕まででき上がっている。きみの考察も深~くなるね。

 

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※出典:読書感想文おたすけブック

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デモナータ3幕<スローター>

ダレン・シャン・作 橋本恵・訳 田口智子・絵 / 小学館