こぶたがずんずん

こぶたが、前向(まえむ)きにしんけんに走(はし)っているすがた、こっけいで、おもしろくて、わらいだしてしまうけれど、読(よ)んだあとで、気分(きぶん)をとってもすっきりさせてくれるお話(はなし)だよ。

君(きみ)も、こぶたみたいになったらいいのにね。

 

1.交通(こうつう)じこ

このこぶたは東京(とうきょう)のどまん中(なか)や、大(おお)きなまちに出(で)ても、きっと、"やっこらさのさ"とかなんとかいって、ずっとひたむきに走(はし)っていってしまうんだろうね。ビルも電車(でんしゃ)も小学生(しょうがくせい)が勉強(べんきょう)している教室(きょうしつ)も、海(うみ)も、谷(たに)も……。こぶたは交通(こうつう)じこにあわないかもしれないけれど・まきぞえをくってしまって、じこをおこす人(ひと)や・びっくりしてひっくり返(かえ)ってしまう人(ひと)もいるかもしれないね。

どこまでもまっすぐ……。こりゃかっこいい。君(きみ)もまっしぐらに、自分(じぶん)の道(みち)を歩(ある)いていけるかな。

 

2.めいわく

どいてやらないといってもどんどんくぐったり、ぶつかったりしてくるから、よけなくちゃ、うるさくてしょうがない。

よけるほうにしてみれば、いいめいわくだよね。けれど、ゆるしてもらえて、しかもわらってもらえるめいわくもある。

どこがちがうのかなあ。

 

3.けんめい

とにかく、いっしょうけんめいだと、なんとなくきょうりょくしてやろうかな、と思(おも)ってしまうものかもしれないね。けんめいに向(む)かってきて、けんめいにしょうがいをのりこえていこうとするこぶたのすがたには、根負(こんま)けしてきょうりょくしてしまうのかな。君(きみ)たちは、自分(じぶん)のやりたいことの前(まえ)にかべがあったらどうする?たすけをよぷ?自分(じぶん)でぶつかっていく?その前(まえ)にいてかべがくずれるのを待(ま)つ?今(いま)までの自分(じぶん)をふりかえってみよう。

 

4.大切(たいせつ)なこと

牛(うし)というのは、しぜん。トラクターというのは、キカイ。こぶたの進(すす)んだ道(みち)は、人(ひと)のれきしともいえるね。しぜんにまけず、キカイにおしつぶされないで、ぎゃくにキカイの重(おも)さをおしのけていく。

これはしぜんをこわしたり、キカイにふりまわされているボクたちに、大(おお)きな、大切(たいせつ)なメッセージをつたえているとはいえないかな。

 

5.こわいもの知(し)らず

これはいいことだと、きっとこぶた君(くん)は示(しめ)してくれているんだよ。こわさを知(し)ると、人(ひと)はおくびょうになってしまう。しっぱいもしないけど、せいこうもしない。そうしたことにくらべると、何(なに)にでもチャレンジする人(ひと)は、しっぱいもするけれど、大(おお)きくせいこうもするんだよね。そんなことを考(かんが)えていくこともできるぞ。

 

6.にくまれない

これが問題(もんだい)だね。こぶたのように、いってみればいつもマイペース、身(み)がって、わがままといったやつがいたら、きっとにくまれて、いじめちれてポイッされるはず。だけど、こぶたはにくまれない。どうしてなの?何(なに)かヒミツがあるのかな。

 

7.ブタハナ印(じるし)のハンコ

何(なん)の意味(いみ)もないんだよ。ただおもしろがって書(か)いただけ。せめて君(きみ)にも自分(じぶん)のハナにスミをぬって、この本(ほん)のブタハナ印(じるし)のわきにつけてみよう。ブタをいたぶって、ハンコがわりにして、あげくに丸(まる)やきにして食(た)べてはいけないということかもしれないそ。ワッバッハ。

でもね、食(た)べてしまうんだ、君(きみ)たちは。ぶたは全部(ぜんぶ)食(た)べられる。そう、食(た)べるために改良(かいりょう)されてきたんだよ。人(ひと)によって改良(かいりょう)され、食(た)べられるこわさを知(し)っているから、こぶたは一目散(いちもくさん)に走(はし)って、にげているのかもしれないな。

 

 

 

※上記の著作権は宮川俊彦にあります。
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※出展:きみにも読書感想文が書けるよ(1989年)

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こぶたがずんずん

渡辺一枝・文 長新太・絵 / あすなろ書房