マイケル・モーバーゴ・作 佐藤見香夢・訳 / 評論社
「ぼく」は十歳。全寮制の学校に行っている。学校は、ラテン語、ラグビー、マラソン、テスト、外出禁止、べとべとするまずいプディングのくり返し。もうがまんできない!
ぼくはある雨の日曜の午後、学校を逃げ出した。家への道の途中、ぼくは犬のパーティーをつれたおばあさんに出会う。これが不思議な物語の始まりだった。
おばあさんの家でぼくは、ライオンがほえている形をしていて、しかも青くキラキラ輝いている不思議な雲を見た。「あの雲はホンモノよ。パーティーとわたしのチョウチョウのライオン。」おどろくぼくにおばあさんは続けていった。「今からいっしょにアフリカへ行きましょう。」アフリカ?チョウチョウのライオン?それって一体?
◎とっちゃまんのここに注目!
感動したな~。正直いって、ジーンときてしまった。白いライオン、白い王子に会えてよかったなあ。
兄弟のように育ったライオンとの別れ。サーカスに売られ、各地を転々とするライオン。そして、戦争後の再会。ほんと、再会の場面は圧巻だった。
クライマックスの「忘れないでほしい」、この言葉は重いね。みんなやがては消えていくのに、どうしても残したいものがある。さて、それは何だろう?
・奇跡
動物と人間とのふれあいは直接的だ。愛情だけがあり、いやなかけひきがない。それだけに、別れは悲しい。そして、感動してしまう。
このストーリー、「奇跡」だと思ったよ。いっしょに暮らしていけることの幸せ、家族のきずなを感じさせられた。
きずなって、血のつながりだけから生まれるものじゃないんだよね。母が死に、父が別の人と結婚し、「ぼくにはだれもいない」というパーティー。だけど、かれにはライオンがいた。そして気がついたときには、あたたかい人々に囲まれていた。愛する人は幽霊になってその歴史を伝えてくれた。
晩年のかれは幸福だったと思う。
・時代背景
戦争をはさんだストーリー展開。部下のために助けにいくシーン、よかったよね。両軍から拍手。勇敢であること、人としての情があることに、敵も味方もない。戦争の時代にも、紳士協定のようなものがあったんだ(これに比べると、中国・日本領事館への亡命事件、なんとも情けない展開だった)。
さて、白いライオンが主人公・パーティーとともにイギリスに帰還したときは、大騒ぎだったという。英国人たちは、そこに何を見たのだろう?人とライオンの間の愛を見たのか?一つのエピソードとして受け取ったのか?ライオンの存在にイギリスという国を重ね合わせたのか?いろいろ読み取れそうだね。
・もう一人の主人公
「もう一人の主人公」についても考えたい。かれ、つまり「ぼく」は、このストーリーの進行役になっていた。
その「ぼく」は、このストーリーから何を考えたんだろう?何をつかんだだろう?読者に何を伝えたかったんだろう?「ぼく」の視点で、切りこみを入れてみてもいいね。
・もう一つの奇跡
それにしても……。ボクは、サーカスのおじさんが約束を守ってくれたことが、何よりもうれしかった。サーカスのおじさんの存在があったから、白いライオンのストーリーは作品になることができたんだ。
戦争で殺されてしまった動物はたくさんいた。日本にもたくさんいた。そんな中でも、奇跡が起こることがある。そのかげには、こういうおじさんの存在があるんだよね。
※上記の著作権は宮川俊彦にあります。
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※出典:読書感想文おたすけブック(2002年)
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よみがえれ白いライオン
マイケル・モーバーゴ・作 佐藤見香夢・訳 / 評論社