またおいで
もりやまみやこ作 いしいつとむ絵
やさしく柔らかい絵だ。タッチがいい。ほのぼのとした淡い恋心のようなせつなさも感じさせる佳作だと言える。どうということのない僕らも良くあるエピソードだ。どこにでもある場面だ。しかし今回の課題図書の一貫したテーマであるように心の動きやそのひだのようなものが丁寧にきめ細やかに語られている。この本の魅力としたら、恐らくそこなのだろうと僕には思える。公園におけるささやかな出会いのドラマ、乳を待つウサギの子の涙、それを見て包んで自分が何とかしなければならないと思ってしまうこのキツネの子。保護愛というのだろうか。それが募ったり勝手に一人歩きしたり、空回りしたり、そして少しだけ思いが通じたり。そういう心と心の回路のようなものが描かれている。こういう本を読むときには共感や共有性に着目することだ。無論自分とのね。これはほのぼのとしていながらどこかもどかしく、どこかせつなく、そういう心尽くして尽くしきれないそういう領域を示しているのがいい。しみじみとした光景と心情が伝わってくる傑作だと言っていい。
<続きは「とっちゃまんの読書感想文書き方ドリル2012」で>