それは一八六○年のことだった。八才から十四才までの十五人の少年が、港に停泊中のスウラギ号に乗りこんでいた。数週間、ニュージーランド沿岸の航海に出かける予定だったのだ。
ところが、どうしたことか、船員である大人たちが乗りこむ前に、船は港を出てしまった。嵐の中を、命からがら陸地にたどりついた少年たち。
陸地は、いったい島なのか大陸なのか?食料はどうする? 水は? 火は?
解決しなければならない問題が山のようにある。
少年たちはまず、寄宿学校を手本に組織を作った。そして、十五人の少年たちの、生きぬくための厳しい生活が始まった。
◎とっちゃまんのここに注目!
実はこの本、その後に続く漂流記モノの原点なんだ。世界中のみーんなが知ってる名作中の名作。書かれたのはもう百年以上も前。もしかしたら、きみのひいおじいさんが読んだかもしれないと思うと、感動しないか?名作は色あせないね。
・サバイバル学習
ドイツとイギリスとフランス。これらの三国は当時、競争し合っていた。みんなが自国の利益ばかりを考えていた時代。日本もそうだった。
その国の子たちが、互いに助け合いながら二年間を生き延びる。ただ生きただけじゃない。勉強し、助け合い、友情を深め、生きる知恵を身につけていく。まさしく今でいう体験学習、サバイバル学習。悪人と戦い、ときには死人も出る激しい学習。「心のケア」なんていっていられない。カウンセラーもいない。
しかし、みんなは確実に成長していく。いいな~。人の本質って、極限状態でこそ見えてくるものなんだよね。
・理想の人間関係とは?
知恵、勇気、助け合い、友情、一人一人の役割、リーダーとしての責任、チームワーク……。そうしたテーマが語られやすい物語。確かにそういう言葉がうかんでくる。そのほかの言葉は見つけにくいくらいだ。
だからこそ、きみの出番。心がかぜをひきやすくなっている時代に生きるきみは、この物語をどう読んだか。ありきたりのキーワードでなく、きみの心をきみの言葉で語れたらいいよな。
・作者について
こぞんじ、この物語の作者は『海底二万マイル』のジュール・ベルヌだ。あの永遠の名作、ネモ船長のね。ジュール・ベルヌはなかなかの、というか、すごい人だったらしい。調べてみるとおもしろいそ。『海底二万マイル』も必読だぜ。
・さて、ポイントは?
この物語をどう読むか。そうだな、「求められているリーダーは?」という点から考えてみるのもいいね。ブリアン、いいよね。ドニナファンもいい味出してるし。あと、登場人物と自分とを引き比べてみたりとかね。
ほかの作品と比べて読んでみるという方法もある。ボクは『R-17』という映画のことを思い出す。「知恵と勇気で理想の社会を作れないものか」といった考え方に、この作品と共通の手ごたえを感じるんだよね。
十五少年たちは島に居続けたとしても、立派な独立国家を作れたんじゃないだろうか。そんなことも思う。
この島に世界中のいろんな国から子どもたちがやってきて、戦争のない理想の文化国家ができたかもしれない。そうしたら、二十世紀という時代は、まったく違う時代になっていたかもしれない。想像はどんどん広がっていく。
ところで、この十五少年たち、十五人としてはしっかり者だけど、一人一人にしたら、どうなったんだろうね。
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※出典:読書感想文おたすけブック
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十五少年漂流記
ジュール・ベルヌ・原作 小沢正・文
クラウス・エンシカット・絵 / 小学館