さえぐさひろこ・作 いしいつとむ・絵 / 童心社
ピピッチは、わたしの空色セキセイインコ。はねはすべすべで、光って見えるほどきれい。
ゆびにとまると、ほんのちょっと重くて、ピピッチのにおいがする。あたたかくて、やわらかくて、ピピッチがいると、くふくふわらいたくなる気持ち。
このところ元気がなくて、お医者さんにみてもらったら、少し、ようすをみましょうと言われた。
きょう、学校から帰ると、家の中はとてもしずかだった。いやな気持ちがして、急いで鳥かごの所に行くと……。
◎とっちゃまんのここに注目!
全体がぴりっと引きしまった、いい作品だね。
かわいがっていたセキセイインコの死から話が始まる。そして、さらにショックなことが起きる。ピピッチの死だけでもショックなのに、とんでもないダブルパンチだ。主人公はそのげん実をどう受け入れていくのか。
自然界で生きるということ。このストーリーはそのきびしさに目を開かせてくれる。
ピピッチ、カラス、りんご……。ボクらは日日、生き物の「生」と「死」に直面している。ボクはそんなことを思ったよ。
・ようすけくんの言葉
ようすけくんは言う。「ピピッチのからだは、カラスと合体したんだ。」この言葉、きみはどう受け取った?
れいちゃんにはトリプルパンチだっただろうけれど、ボクはこれもひとつの考え方だと思う。カラスに食べられなかったとしても、ピピッチの体がそのまま残ることはなかった。やがてピピッチは、自然の中で分解されていっただろう。とすると……?
人間も、自然界の「食べる・食べられる」という輪の中にいるということを頭において、あれこれじっくり考えてみてほしい。
「死ってなんだろう」という問題に正面から取り組んでみるのもいいね。
・カラスは悪もの?
カラスが生き返ってよかった!死んでいたら、れいちゃんはよけいに苦しんだだろうね。
じつはボクも小学生のころ、飛んでいるカラスをパチンコでねらったことがある。カラスが落ちて、こわくなった。もう二度とおもしろ半分で生き物をこうげきしたりしないぞと思った。
ところで、カラスは悪ものなんだろうか。カラスはピピッチを食べてしまった(たぶん)。だけど、ピピッチはすでに死んでいた。さて……?
生きているピピッチが食べられたとしたらどうだろう。カラスは悪もの?かたきをうってもいいのだろうか?きみはどう思う?
・れいちゃんの心の変化
れいちゃん、初めはカラスのことを、「あいつは、ひどいことをした悪ものなんだよ」と言っていたね。でも、石が当たって、いざカラスが気ぜつすると、とまどう。むねが苦しくなる。
そして、カラスがりんごをくわえて飛び立つシーン……。このストーリー、どうしてこういう結末になったんだろう?
れいちゃんの心の変化を追ってごらん。見えてくるものがあるはずだ。
作者が作品にこめたテーマや思いを読みとりたいね。
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