さて、今(いま)まで言(い)ってきたことを、ここらでまとめてみよう。どうすればいったい書(か)けるようになるかを、話(はな)してみようね。
読書(どくしょ)感想(かんそう)文(ぶん)というと、何(なん)と言(い)ってもまず、しなくてはならないのは「読(よ)む」ということ。そうだよね。読(よ)まなくては書(か)けないからね。
中(なか)には読(よ)まずに書(か)く人(ひと)もいるけどね。ボクもむかしは、本(ほん)を読(よ)まずに書(か)いて、だいぶほめられたものです……。なんて、でもほんとうは、やっぱり読(よ)んだほうがいいな。
本(ほん)を読(よ)む時(とき)は……。ただひたすら読(よ)めばいいんだ。それだけだよ。あらすじなんかまとめようと思(おも)わなくてけっこう。ゴローンとねそべって読(よ)んだっていいんだよ。
しかし、読(よ)み始(はじ)めたら、いっきに読(よ)み終(お)えてしまうのが大切(たいせつ)。今日(きょう)はここまで、明日(あした)はここまで、というのではダメ。読(よ)み切(き)ってしまう。これが第一(だいいち)のポイントだ。
ところが、それだけではうまくはいかないんだよね。あーっおもしろかった、つまらなかったで終(お)わってしまうから。
そうなると読書(どくしょ)感想(かんそう)文(ぶん)なんてものは、いやでいやでしかたがない、ということになってしまうよね。
話(はなし)のあらすじ、流(なが)れがわかったら、一日(いちにち)か二日(ふつか)ボケッとして、いそうならないように、ろいろ頭(あたま)の中(なか)で思(おも)い返(かえ)してみよう。
こんなこと、あんな場面(ばめん)と、つぎつぎと思(おも)い起(お)こして、そうぞうしてみる時間(じかん)がひつようなんだよ。
そしてこんどは、読書(どくしょ)感想(かんそう)文(ぶん)のために読(よ)んでみるんだ。その時(とき)に大切(たいせつ)なのは、もうテーマを決(き)めておくということ。
そのテーマというのは、
――この話(はなし)は、いったい何(なに)をめぐって語(かた)られているのかということ。
それを見(み)つけ出(だ)しておく。それだけを考(かんが)えて読(よ)めばいいんだよ。
テーマはひとつの時(とき)も、ふたつ、みっつの時(とき)もあるからね。どういうものをめぐって書(か)いてあるかは、これまで話(はな)してきたとおり。その中(なか)にかならずあるんだ。ないと思(おも)ったら、見(み)つかるまでさがすことだね。
よくいっぱい本(ほん)を読(よ)むし、読(よ)むスピードもはやいんだけど、また本(ほん)はすきだけど、書(か)くことができないという人がいるよね。これは、ただ読(よ)んでいるだけだがらなんだ。
感想(かんそう)文(ぶん)には、読(よ)んでりかいする力(ちから)がひつようなんだよ。自分(じぶん)なりに読(よ)み、見(み)ていくことが……。ただ語(かた)られていることだけを、そのまま受(う)けとめているのとはちがうんだよね。
かりにテレビアニメをねそべって見(み)るように、読(よ)みながら、気楽(きらく)に自分(じぶん)の思(おも)いをめぐらせる読書(どくしょ)があるとすれば、読書(どくしょ)感想(かんそう)文(ぶん)は〝何(なに)を考(かんが)えてんだろう〟〝ひはんしてやろう〟というこうげきてきなものになるよね。そういうのが、ほんとうの読書(どくしょ)感想(かんそう)文(ぶん)ってこと。
さいしょは、短(みじか)くてかんたんなものから、読(よ)んでいくといいと思(おも)うよ。こんなかんたんなものイヤダなあと思(おも)うものから、始(はじ)めていくといいね。
どうも読書(どくしょ)感想(かんそう)文(ぶん)はすきじゃないという人は、わらい話(ばなし)からでもいいから、深(ふか)く読(よ)むようにしていこう。そうすることによって、かならず読(よ)み方(かた)が変(か)わってくるから。
課題(かだい)図書(としょ)は、たいがい長(なが)い話(はなし)が多(おお)いんだけど、さいしょから、これにとりくむよりも、短(みじか)くてすぐ終(お)わるものを、くり返(かえ)し読(よ)むほうが、読(よ)む力(ちから)がつくんだよ。
もちろんこれは、読書(どくしょ)感想(かんそう)文(ぶん)を書(か)くための読(よ)み方(かた)だけどね。そうやっていくと、長(なが)い文章(ぶんしょう)でも、おおざっぱに大(おお)きくとらえて見(み)ていぐことができるようになるんだよ。
いろいろな出来事(できごと)があっても、
――ようするに、こういうことなんだな。
と見(み)えてくるようになる。
こうして読(よ)むことを、ちゅうしょう化(か)、かんげん化(か)というんだ。
読(よ)むための読(よ)み方(かた)には、方法(ほうほう)なんかない。だけど、書(か)くための読(よ)み方(かた)には、方法(ほうほう)があるんだ。
――かんじょう、動(うご)き方(かた)、生(い)き方(かた)、受(う)けとめ方(かた)、主人(しゅじん)公(こう)についてや登場人物(とうじょうじんぶつ)についての目(め)の向(む)け方(かた)、その文(ぶん)を生(う)み 出(だ)す作者(さくしゃ)について考(かんが)える、その話(はなし)の生(う)まれたはいけい、ひはん、もんく、悪口(わるぐち)、それとはまったくちがった話(はなし)、主人公(しゅじんこう)とはまったくちがったもの、生活(せいかつ)のようす、人々(ひとびと)のむすびつき方(かた)、つながり方(かた)、文字(もじ)の大(おお)きさ、よく使(つか)われることば、場面(ばめん)が動(うご)いていくキッカケ、理由(りゆう)、読(よ)みながらの自分(じぶん)の心(こころ)・気分(きぶん)・色(いろ)・形(かたち)・味(あじ)・食(た)べもの・飲(の)みものにたとえる、文章(ぶんしょう)のはだざわりを感(かん)じるなど、など、など。
これらすべてが、書(か)くためのチェックポイントなんだ。
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