ドングリ山のやまんばあさん

ドングリ山のやまんばあさん

富安陽子・作 大島妙子・絵 / 理論社

 

ドングリ山のてっぺんに住んでいる「やまんばあさん」は御年二百九十六歳。だけど、ヨボヨボどころか、オリンピック選手よりも元気で、プロレスラーよりも力持ち。人間の大人でも一時間はかかる山道をたったの四分三十秒でかけ上がり、けわしい谷間もぴょんとひとっ飛び。大きなクスノキの幹のほらにすてきな家をかまえている。でもまあ、ドングリ山全体が、ばあさんの家みたいなものなんだけどね。

 さてさて、やまんばあさんは、どんなばあさんなのか。ドングリ山でどんな毎日を送っているのか。どんなコトが起こるのか。とにかく、いますぐ読んでごらんよ。

◎とっちゃまんのここに注目!

やまんばあさん、カワイイね。スーパーウーマンだね。オリンピックに出てほしいな。一人で全種目をおさえられそうだ。

やまんばあさんみたいな人、ボクたちの世界にもさがせばいるだろうか?ボクは、どうもどこかにいるように思えてならないんだ。いまは、そういう人たちは、ひっそりとドングリ山のようなところに身をかくしているような気がする。あるいは、きみのすぐ近くに……?

物語のしめくくりの二行にも注目。すてきだね。

・考えるポイントは?

1 「だいたい、年とった動物というのは、人間なんかよりずっとたくさんいろんな事を知っているもんなんだ。だって、動物っていうのは、人間の何十倍も耳がいいからね。それだけたくさんのことを闘いているのさ」

これ、とてもいい言葉だね。こういう一文を読みのがさないようにしていくと、この物語の読み方、ちがってくるんじゃないかな。

2 なんでも自分の都合のいいようにとってしまうやまんばあさん。ゆかいに笑える。だけど、笑った後で考えこんでしまう何かがある。

ばあさんは、とてもやさしいね。たのまれたことを真けんにやるし、とてもすなおだ。ばあさんの行動や心持ちの根っこにあるものは、なんなんだろうね。そこにきみのメスを入れてほしい。

3 ばあさんは明るいし、めちゃめちゃ元気だけど、孤独だ。山の外の世界は知らない。世界は自分の想像の中にある。百年も町に行っていないんだもの。

山には、人間にはわからないことがたくさんありそうだ。山にいるからこそ、見えることがあるのだと思う。その一方で、外の世界と「かかわらない」こわさも感じる。この物語、その両面を教えてくれるよね。

4 やまんばあさんと、人間のばあさんの出会い。きみはここに何を感じる?やまんばあさん、人間のばあさん、両方の気持ちを考えて-みよう。

ボクは、どんなに世界が寒くても、心あたたかく生きられる人たちがいる、つまり、季節は人の心の中にある、ということを思った。

やまんばあさんは明るく強く生きてきたけれど、友だちができるまでは心の中に冬を持っていたのかもしれない、とも思った。心の中の冬が、やまんばあさんを必要以上に強くしていたし、やまんばあさんらしさもそこから生まれていたんだ(ボクの想像だよ)。

ボクはちょっと心配だ。この先、やまんばあさんはどうなるんだろう。友だちがこいしくて、ないたりしないかな。きゅうに弱くなったりしないかな。いやいや、かわらず元気に強く生きていけるのが、やまんばあさんかもしれない……。

読み終わってからも、やまんばあさんのことが気になってしかたがない。

きみはどうかな。

 

 

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※出典:読書感想文おたすけブック(2003年)