相手を理解する力をつける

人はね。人の中で生きていく。家族も、クラスも、社会も、人の集まりだ。そこで君は一生人と関わって生きていくしかない。この人はどんな人か、何を思い、何を考え、何を求めているのか。そうしたことを、常に読解していくしかない。

 

◇言葉にならないこと

読解なんかしないで、相手に聞けばいいと言う人がいる。相手が語ったことで、相手の考えを判断したらいいと言う。

でも、それだけではだめだ。人には言いたくても言えないこともある。むしろその方が多い。そういう言葉にならない部分は、言葉や全体の雰囲気や、行為から推測していくしかない。

本を読み、感想文を書くのは、そのためのトレーニングだ。本の中には、作家の分身として多彩な人間が描かれる。それを読むことは、人間を学ぶということだ。本は人の読解、社会の読解の手引きだと思っていい。

 

◇読解は一生のテーマ

相手を理解するのは、そう簡単なことではない。君の両親について、君はどこまで理解しているだろうか。また、両親は君のことをどこまで理解しているだろう。

たいていの人は、分かった気になって、そこでとどまっている。でも、人は日々変わる。それに、君の見方や価値観も変わり、そして増えていく。だから、その都度、新しい発見がある。

人は深い海のようなものだ。

ボクが何十年も、読解し続けている理由が分かるよね。どんなことでも断定などできないものだ。どんな意見でも「それもある」ということになる。

 

本を読むことは、体験することでもある。その体験は、実際よりリアルだったり、複雑だったりする。

古典を読めば、時代を経ても変わらぬ人の姿が見えてくる。反対に、時代とともに、変わったことも見えてくる。

君の部屋の本棚には、本が増え続けないといけない。読んだ本はできたら一生残しておくといい。何年かして読んだら、また新しい発見がある。その本棚には君の変化と成長の軌跡が詰まっている。

たとえ参考書でも問題集でも教科書でも。本は財産。君の子にも孫にも残していくことができる。言葉は人類の遺産だ。

 

 

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※出典:読書感想文書くときブック(2010年)