兄弟みんなでマルタ島近くんの船にいるお父さんに手紙を書いた。「夏休みに島に探検に行っていいでしょう?」
返事は「オボレロノロマハノロマデナケレバオボレナイ」やった!ぼくたちにはわかる。これはお許しの電報だ。そこでジョンを船長に、航海士スーザン、AB船員ティティ、ボーイのロジャらウォーカー家の四人兄弟は、無人島・ ヤマネコに向けて(とても小さな)帆船「ツバメ号」で出発した。
島でのキャンプ生活に入って三日目、ツバメ号と同じ大きさの帆船「アマゾン号」が現れた。帆船「アマゾン号」はなんと海賊旗をかかげている!アマゾン号は敵か味方か?乗っているのはだれなのか?
そこに打ちこまれた一本の矢。アマゾン号の挑戦だ!
◎とっちゃまんのここに注目!
今流行の自然体験学習、サバイバル学習という味があるよね。一種の「ごっこ遊び」といえるかもしれない。
本の作りとしては、「教則本」というところかな。「こういうときにはこれに注意して、こういうことを知っておく必要がある。これがルールだ」という具合だね。そうやって、航海のしかたや、どこかに漂着した場合の心構え、 生き方を教えようとしている。
それにしても、冒険心をくすぐられる。夢中になって読んでしまうよね。 シリーズは全部で十二巻。夏休みの読書にぴったりだ。
・戦いの中で
ボクはこの本の中に一貫してある、あるモノの存在を感じてしまった。それは戦争だよ。この本ができたのは、戦争中のこと。ストーリーの背後に、どことなく緊張が流れている。スーザンたちにも、たぶん、戦いの中で生きているという意識がかなり濃くあると思う。
もっとも、そもそも、生きること自体が戦いなんだけどね。その意味でも、登場人物たちは、みんなしゃきしゃき生きていて、のほほんと生きているボクらとは、何かがちがう。
ボクは、今のボクたちは、生きることに対してどこか鈍感になっているような気がしてるんだけど、きみはどう思う?
・学ぶこと、生きること
自分たちの遊びとツバメ号、アマゾン号の乗組員たちの遊びを比べてみよう。これはきみのすべきこと。どこが?何かハッとするところはないだろうか? だいたいきみは、風を読んだり、帆を操ったりできるかい?
そういった、かれらの遊びの意味を問う感性があると、このストーリー、 ちがった色彩を帯びてくるはずだ。
初めに「ごっこ遊び」だと言ったけど、そう、この子たち、じつは「わかってる」って感じだ。船長同士の会見などなかなかのもので、条約もしっかり ふまえている。読んでいると、学習ということの本質を教えられる気がするよ。
知恵とは、現場から学ぶもの。そして、現場で学んだことは実行できなければ意味がない。頭にかかえこんでいるだけじゃ、それは生きた知恵とはいえないよね。そして、この本の中で、乗組員たちはみんな、生きた知恵を働かせている。
もうわかっただろう。『ツバメ号とアマゾン号』は、世界を映しとった箱庭なんだ。子どもの遊びをつづったように見えるけど、じつは、生きることそのものがえがかれている世界なんだよね。それが作者の意図するところだと思う。
読むときは、作品世界に入りこんでひたすら楽しく読んでほしいけど、感想文を書くときには、この本をただの子ども冒険物語ととらえたら、浅くなってしまうよ。本の構造を大きくとらえてみてほしい。
子どもたちの真剣さを思い出してごらん(やがて続編で、この子たちはほんとうの海に出てしまうんだぜ。さて、どうなる?)。そして、この緊張感がある世界にきみもしっかり向き合ってみないか。
※上記の著作権は宮川俊彦にあります。
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※出典:読書感想文おたすけブック
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ツバメ号とアマゾン号
アーサー・ランサム・作 神宮輝夫・岩田欣三・訳 / 岩波書店