感想文を書くためには、必ずしも本を読まなくてもいい。音楽でも、絵画でも、事件でも、本と同じ。それについて、君が考えたことを書きとめれば、それが感想文になる。
文章が上手だとか、漢字が正しく書けるだとかいったことは、国語の学習範囲。感想文の命は「上手に正しく書く」ことではなく「君の考えを書く」ことにある。
ボクはこれまで感想文を書くには、次の三点を書けばいいと教えてきた。
① どんな本か
② 何についてどう書いてあるか
③ それについてどう思ったか
でも、これは一般大衆向けの大前提。これにしたがって、あらすじを書いて、感想をまとめて「楽しかった」とか「面白かった」という程度の言葉を配置して、それで終わりでは、なんの意味もない。
◇自分の意見を書く
感想を書くのは、自分の強化のため、君が作っていくためだ。
本から取り入れた知識や本を読んで考えたことは、それを自分の言葉として表現して、はじめて消化したことになる。逆に言えば、理解の範囲、考えられる範囲でしか表現はできない。
感想というのは、意見のことだ。自分の意見を言うのは、日本人は得意ではない。無条件に「すばらしい」「感動した」と賞賛した方が無難だと考えてしまう。
しかし、健全な人間は、健全な批評精神を持つものだ。それは自分の中に価値観や尺度を持っているからだ。そこから、自分の意見も生まれる。
◇たくさんの視点を取り入れる
意見がひとつに凝り固まっていたら、それはそこで完結するだけだ。君はまだ成長の途上。いろんな価値観や尺度を本から取り入れて、自分でも編み出し、使ってみることだね。
矛盾があったって構わない。こんな人もいる、こんな考えもある、こんな見方もあると、多くの視点や観点を理解して、たくさんの尺度を自分の中に取り入れることが、自分を作り、成長することだ。
そうして取り入れた視点は、文章に書くことで君のものになる。感想文だからといって「感動した」とか「おもしろかった」といった感想的な言葉を書かなくてもいい。
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※出典:読書感想文書くときブック(2010年)