マーリー・マトソン・作 日当陽子・訳 矢島眞澄・絵 / フレーベル館
ミーガンが暮らす街に、もうすぐ新しい家族がこしてくる。不動産屋さんの情報によれば、ミーガンと同い年の九歳の女の子がいるらしい。
いい子かな?ああ、親友になってくれますように――どんな子が来るのか、
ミーガンは気になって気になってしかたがない。
夏休みの最初の土曜日に、とうとうその子がやって来た。
「あたし、ミーガン。四軒となりに住んでるの!親友になろうよ!」
勢いこんであいさつしたミーガンだったけれど、女の子はびっくりしたように飛び上がってしまって……。
アメリカの日常生活を背景に、明るくたくましいミーガンと、内気ではずかしがりやのシンディの友情をえがく物語。アカデミー賞受賞女優の自伝的小説。
◎とっちゃまんのここに注目!
この本はおすすめ。さわやかで、会話が多くて軽やかで、一気に読める。しかも元気が出る。いわば、陽性の本なんだ。だけどちょっと目をこらすと、そこごこに深遠な言葉やフレーズが横たわっている。
感想文の要素になるテーマも、いっぱい。「心の成長」といったワンパターン感想文ににげこまずに、自分なりのテーマと切り口を探してごらん。
・フロンティア・スピリット
「正しいのかな?」「たぶん」「正しいのかもしれない」といった、ミーガンの心の中のセリフが印象的だったよね。ミーガンは、パパやママに何か言われた時、いつもそんなふうに検証している。パパやママに言われたことに、ただ従うのではない。自分で考えて、判断し、結論を出していくんだ。
アメリカの女の子って、独特だね。明るくて、元気があって、あっけらかんとしている。ぐずぐずしていないし、へこたれない。フロンティア・スピリット(開拓者精神)というべきものがあって、自分と自分の進むべき未来がはっきり見えているような気がする。この前向きな精神は、この本の大きな魅力。自由の国アメリカに息づいている精神なんだろうね。
・ミーガンの個性
ミーガンは耳が聞こえない。きみはこのことをどうとらえた?
ボクは障害という言葉があまり好きではない。世の中には、障害がある人のことは一も二もなく助けなければ、という考え方もあるけれど、さまざまな条件のもとで自分の人生を開拓していかなければならないのは、だれだって同じだ。
この本でも、耳が聞こえないことは個性の一つとしてとらえられていたよね。
このテーマについて、じっくり調べ、考えてみるといいと思う。
・「助ける」ということ
人を助けるって難しい。ママは、助けるかどうかは相手に聞いてから、と言っていた。そう、相手のためと思っても、助けることがマイナスに働くこともある。やり方によっては、厚意をお第介にとられることもある。相手の意思、周囲の気持ち、意地や遠りょ――あれこれ考えると、助けることは一筋なわでは行かない。
だけど、パパがいいことを言っている。「手助けを頼んだっていいんだよ、
ミーガン。その分お返しをすればいい」
なるほど!これは助ける側にも助けられる側にも通じる一つの真理だね。
・ミーガンとシンディの友情
これも追求しがいのあるテーマだ。友情はごっこ遊びとはちがう。たがいに尊敬し合える関係じゃなければならないし、「親友」なんてそうそう見つかるものでもない。だから、「親友」という言葉は胸にしまっておいたほうがよくはないかな?ボクはふと、そんなことを思った。
だけど今、ミーガンとシンディは、「親友」という言葉のもとで人との付き合い方をレッスン中なんだろうね。この二人の関係が教えてくれることは多い。
ミーガン、シンディの友情と、きみ自身の現在とを比べたりつづり合わせたりして、友情論を展開してみるのもいいだろう。自分のエピソードも交えてね!
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※出典:読書感想文おたすけブック(2008年)