なぜ、めい王星は惑星じゃないの?―科学の進歩は宇宙の当たり前をかえていく
布施哲治・著 / くもん出版
少し前まで、太陽系には「すい・きん・ち・か・もく・どっ・てん・かい・めい」の九つの惑星があった。ところが、二〇〇六年の夏、「めい」がはずれて、太陽系の惑星は八つになってしまった。
でも、めい王星は消えてなくなってしまったわけではない。惑星ではなくなったけれど、今でも太陽のまわりを回り続けている。じつは二〇〇六年に開かれた国際会議で、「惑星とは、どういう天体か」という定義が決められ、めい王星は惑星ではなくなってしまったのだ。
それでは惑星というのは、いったいどんな星のことをいうのだろう?なぜ、定義づけが必要なんだろう?
二十一世紀のコペルニクス先生が案内する、最新天文学の世界。
◎とっちゃまんのここに注目!
この本には、古代エジプトから現代に至るまでの、宇宙を研究している人たちの歴史が書かれている。長い歴史を背景にして、「科学的な研究とはいかなるものか」が解き明かされていくんだよね。
長方形の大地、星は天のランプ……古代の人たちが考えた宇宙の姿を見て、
きみはどう思った?「ありえないよ」って笑い飛ばすのは簡単だけれど、それではもったいなさすぎるよね。
宇宙探査船はもちろん、望遠鏡すらなかった時代に、人びとは肉眼で星を観察してその動きを記録し想像力を働かせた。22ページの図は、古代エジプトの知識と技術が結実した、当時の「最先端」の宇宙像だ。
科学の世界はいまだ絶え間なく進化している。今みんなが信じている宇宙の姿も、いつの日か大きく変わっているにちがいない。
「じつは『変わっていく』のではなく、『ほんとうのことに、さらに近づいている』のです」という著者の言葉をしっかりおさえておきたいね。
・直径10㎝ のりんご
著者は、国立天文台ハワイ観測所の研究員で、世界最大級の天体望遠鏡すばるを使って、太陽系の観測や研究を行っている人だ。この本にはそうした専門家ならではの、宇宙のことを自分の頭で科学的に理解している人ならではの道標があるから、ボクらはその道標をたどって理解を進めていけばいい。
たとえば、地球を直径10㎝ のリンゴとすると、太陽は直径約11m もある気球で、りんごと気球の問は約1200m 離れている――こういう説明はとてもわかりやすくて、理科が苦手でもすーっと頭に入ってくるよね。
だけど、読み終えて、「わかりました、勉強になりました」ではつまらない。
ボクたちも科学的な思考をおし進めなくっちゃ!そして、その考察をレポート
にまとめてみようよ。直径10㎝ のりんごは、そのためのいいものさしになるね。
・科学の言葉
この本には、科学について考える時に基本となる言葉がたくさん出てくる。それらの言葉に目を向けて、掘り下げてみることも重要。ムードで読み飛ばすのではなく用語としてきちんと理解すると、おもしろさ、楽しさが倍増するよ。
「定義」や「科学的な研究」についても追究したい。「コペルニクス的転回」や「天動説と地動説」「星の名付け方」などは、そのまま感想文のテーマになるね。
・星をながめてみよう!
太陽系の最新の姿について知ることができて、ボクは大満足。しかし、知りたいことはまだまだある。遠い宇宙はどのような姿をしているのか?人間のような生命体はほかの星にもいるのか?宇宙にはまだたくさんのなぞがある。
今年はさ、星をながめてみようよ。きっと何か感じるよ。本を読んで、星を見て、また本を読む。そのうち、頭の中のスクリーンに宇宙がうかぶ。宇宙が動く。レンズも自由自在だね。これが読書の醍醐味さ。
そうして、きみの考える太陽系の姿、宇宙の果てや時聞など、想像の世界をどんどん広げていけばいい。君の学宙論がイメージとして作られていけば、これはなかなかおもしろいことになるよ!
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