七草小屋のふしぎなわすれもの

七草小屋のふしぎなわすれもの

島村木綿子・作 菊池恭子・絵 / 国土社

 

ブナやコメツガ、ダケカンバの森にいだかれた七草小屋は、山に登るお客さんが休んだり泊まったりするための山小屋です。

小屋番の草介は、十一月から来年の四月まで、ひとりでこの小屋を切り盛りすることになりました。

その一日目のこと。草介は、「わすれもの」と書かれた箱を見つけました。箱の中にあったのは、小さな緑色の目覚まし時計、かざぐるま、水筒、オカリナ、卵色のバッヂ、それから、ハナビラタカラガイ……。

その翌日から、ちょっと変わったお客さんたちが七草小屋を訪れるようになりました。このお客さんたちの正体は……?

胸のおくが暖かくなる、六つの不思議物語。

◎とっちゃまんのここに注目!

山の空気や風が感じられる、みずみずしいファンタジー。現実とまぼろしが入り交じったような、不思議な味わいだ。ひとりで山小屋の管理人なんかをしていると、いろんなことに出くわしてしまうんだろうなあ。

不思議なことを自然に受け止めてしまう草介がいい。いやいや、草介がそういう人間だから、不思議なゲストたちを引き寄せてしまうのかな?相手に気をつかって、「ぼくは……、そ、そう、カワウソです」なんてロばしってしまう草介だからね。

寝ぼすけの佐藤さんに、元ウサギの松下さん、山の世話人に、風の管理人。おかしな「登場入物」たちもすてきだ。楽しんで読んでほしい。

・忘れ物の意味を探せ!

忘れ物一つ一つに意味があったことに注目しよう。忘れ物は、ただの「物」じゃなかったよね。たとえば、目覚まし時計は不思議な幕の開く合図だったし、水筒は子ども時代の草介とモグオを呼んだ。ハナビラタカラガイの力といったら、とてつもなかった。草介に見つけられたとたんに、忘れ物が忘れ物じゃなくなった点にも注目。

「これは何を表しているんだろう」とか、「何の象徴だろう?」という見方をしてみるといい。思い出、記憶、どこでもドア、別世界へのとびらを開くカギ……いろいろな答えが見つかりそうだ。

作者の「物」に対する思いを読み解いてみるのもいい。「物」に宿る力や、「物」にまつわる思い出を大切に考えている人のような気がするな。

・山の力

山には、何かがある。太古から続く自然や、人の暮らす場とはちがう、人をこばむような気配。魔物だっているかもしれない。そう、山の力というものは確かに存在する。これにも、切りこんでみたいところ。

風の管理人が言っていたように、「どんな自然にも、強い力がある」のだ。

・感想文はどう書こう?

きみはこの物語のテーマをどうとらえるだろう?自然と人、人の思い、まぼろしの中の真実、山の力、やさしさ、出会い……。

読んでいる時はおもしろいけれど、ファンタジーのストーリーのおくにあるものを引き出すのは大変だ。感想文を書くためのテーマを見つけられないこともめずらしくない。

そういう時は、テーマ探しの過程をそのまま文章にしてもいいんだよ。読んだ後、なんとなく見えたこと、ぽわんと心にうかんだことを書いてもいい。

それでも困ってしまったら、主人公と登場人物の会話に着目しよう。きっと、「あっ!」と思うことが見つかるはずだ。気に入った場面やセリフ、フレーズ探しをしてもオーケー。「宇宙の果てまでのぞけそうなくらい、深くて濃い青色。わたしもそんな空を見てみたいです」なんてね。

ちなみに、ボクが気に入ったのは、訪ねてきた二人の男の子がかつての自分だったという場面。ここは意味深。小さな二人と大人になった草介は、見えない力に導かれてあの場で出会ったのかもしれない……。「見えない力」、これもテーマになるな。

 

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※出典:読書感想文おたすけブック(2007年)