ぼくのだいすきなケニアの村(むら)

ケリー・クネイン・作 アナ・ファン・絵 小島希里・訳 / BL出版

 

にわとりが鳴(な)いて、アフリカの緑(みどり)のおかに朝(あさ)がやってきました。レモン色(いろ)の太陽(たいよう)が、はとのすむユーカリの森(もり)の上(うえ)ににぼっています。ケニアの一日(いちにち)の始(はじ)まりです。

「ポジ?(だれかいる?)」「カリブ!(おはいり!)」は、スワヒリ語(ご)のあいさつ。元気(げんき)にあいさつしたら、朝(あさ)ごはんの時(とき)問(もん)です。

じいちゃんの牛(うし)の見(み)はりをして、友(とも)だちの店(みせ)をのぞいて……きょうは、どんな一日(いちにち)になるのでしょう?

大(おお)いなるアフリカの大地(だいち)でくらすカレンジン人(じん)の少年(しょうねん)の一日(いちにち)を、色(いろ)あざやかなイラストでつづった絵本(えほん)です。

 

◎とっちゃまんのここに注目(ちゅうもく)

きみはケニアを知(し)っているかな?赤道(せきどう)直下(ちょっか)の国(くに)で、首都(しゅと)はナイロビ(マサイ語(ご)で「さわやかな水(みず)」という意味(いみ)なんだって)、世界(せかい)に「もったいない」を広(ひろ)めたワンガリ・マータイさんがケニア出身(しゅっしん)だよ。ボクは子(こ)どものころ、「少年(しょうねん)ケニヤ」というマンガにむちゅうになった。

主人公(しゅじんこう)の男(おとこ)の子(こ)は、アフリカの自然(しぜん)の中(なか)でのびやかにくらしている。シンプルな感想(かんそう)だったら、「行(い)ってみたいな」とか、「いろいろな動物(どうぶつ)たちと遊(あそ)べていいな」といったことになるかな。だけど、それだけではちょっと物足(ものた)りない。

たとえば、「作者(さくしゃ)はこの村(むら)をどう見(み)ているのかな」、「作者(さくしゃ)はこの本(ほん)を通(とお)して何(なに)を言(い)おうとしているのかな」といったとらえ方(かた)もしてみよう。

物語(ものがたり)の村(むら)がケニアのどこにあるのかも知(し)りたいよね。アフリカの自然(しぜん)や地理(ちり)、歴史(れきし)についてもしっかり調(しら)べて、「深読(ふかよ)み」にチャレンジしよう。

 

・あと半世紀(はんせいき)したら?

主人公(しゅじんこう)の男(おとこ)の子(こ)の一日(いちにち)、きみの一日(いちにち)とくらべてどうだった?

自然(しぜん)と共(とも)にある、のんびりした生活(せいかつ)――作者(さくしゃ)は、都会(とかい)のくらしが失(うしな)ったものがこの村(むら)にはあると、伝(つた)えたかったのかもしれないね。

少(すこ)し前(まえ)までは、日本(にほん)でも、動物(どうぶつ)たち(ペットではないよ)と共(とも)にくらしていたんだよ。家(いえ)には土間(どま)があり、子(こ)どもも働(はたら)いていた。だけどボクたちは、この村(むら)のようなくらしをすてた。土(つち)のにおいのする、けむりのくすぶる家(いえ)ではなく、

エアコンが入(はい)ったくらしを選(えら)んだんだ。人(ひと)のくらしは、またたく間(ま)に変(か)わる。

あと半世紀(はんせいき)したら、この村(むら)のくらしはどう変(か)わっているのだろう。ビルがそそり立(た)っているかもしれないし、もっとまずしくなっていることだってあるかもしれない。「今(いま)のまま」を守(まも)り続(つづ)けることは、案外(あんがい)むずかしい。世界(せかい)は「進歩(しんぽ)」という言葉(ことば)に向(む)かってつき進(すす)んでいるからね。

そこで、きみにたずねたい。進歩(しんぽ)って、何(なに)がどうなることだと思(おも)う?「進歩(しんぽ)=ゆたかさ」なのかな?失(うしな)ってはいけないものって何(なん)だろう?これ、感想(かんそう)文(ぶん)の大(おお)きなテーマになると思(おも)うよ。

 

・絵(え)を読(よ)もう!

絵(え)の中(なか)の男(おとこ)の子(こ)は、大(おお)きなひとみをかがやかせて、母(はは)なる大地(だいち)をぴょんぴょん飛(と)びはねている。いつも幸(しあわ)せそうに笑(わら)っている。お月(おつき)様(さま)の下(した)で、気持(きも)ちよさそうにねむっている。どんなゆめを見(み)ているのかな?

風景(ふうけい)、家(いえ)、道具(どうぐ)、動物(どうぶつ)たち……絵(え)をじっくりながめていると、見(み)えてくることがある。この本(ほん)、絵(え)そのものがストーリーなんだ。

ボクは、村(むら)の人(ひと)びとのこと、この村(むら)ならではのくらしや食(た)べ物(もの)について、

もっとくわしく知(し)りたいと思(おも)った。

言葉(ことば)、文化(ぶんか)、伝統(でんとう)。絵(え)を手(て)がかりにして、村(むら)のことを調(しら)べてみてもいいんじゃないかな。本(ほん)って、いろいろな角度(かくど)から読(よ)むことができるんだよ!

 

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※出典:読書感想文おたすけブック2008年度版