ものすごくおおきなプリンのうえで

ものすごくおおきなプリンのうえで

二宮由紀子・文 中新井順子・絵 / 教育画劇

 

すてきな本だ。

「おおきなプリン」じゃなくて「ものすごく大きなプリン」。ここがいい。すてきなアイデアだね。

ぼくたちも「ものすごく大きな」ということを、想像してみたらどうだろう。これはすてきだ。それに大切なことだと思ってしまった。

 

☆ものすごく大きな想像をしよう

ものすごく大きな家

ものすごく大きなモンブラン

ものすごく大きなごはんつぶ

ものすごく大きな砂場

ものすごく大きなポタージュスープ

ものすごく大きな津波

ものすごく大きな地震……

 

とてつもなく大きなことを、いつも想像していたら、ボクたちの心の中で「気をつけること」も、もっとたくさんになっていたはずだ。そうしたら、地震や津波の被害は小さくできたかもしれない。

常識はずれと思われても、みんなから「どうしてそんなこと考えるの?」なんて言われても、想像することは必要なんだ。想像する力は、物語を読むときだけに必要なんじゃない。

 

☆めちゃめちゃ書けば、頭がやわらかくなる

とっちゃまんのところでは、ときどき「めちゃ作文」というのをやるんだよ。なんでもかんでもめちゃめちゃに書いていく。

オバマでも、くじらでも、ボボボボーン(!?)でも、何を登場させてもいい。それを、切ったり、むすんだり、わったり……、何をしてもいいんだ。

めちゃめちゃ書いて、頭をやわらかくしていくんだ。

でないと、あたりまえのことだけしか考えられなくなってしまう。それでは進化なんかできないしね。

現実にはなさそうなことを「荒唐無稽(こうとうむけい)」という。世間一般の人は荒唐無稽をきらう。でも、きみはきらってはいけない。

きちんと、ものごとを考えていこうとするなら、荒唐無稽になることを恐れてはいけないんだ。

 

☆目をつむって「なりきる」

この作品は荒唐無稽な想像だ。ものうごく大きなプリンの上で、なわとびをしたりしている。

ものすごく大きなアイスクリームの上でも、なわとびをする。注意しないと、ボクたちの体はアイスクリームの中に埋まってしまう。

 

こうい作品はいいね。

こんな作品を読むときには、目を閉じてみるといい。目をつむって「なりきる」といいんだ。

プリンの上でなわとびをしている。その気持ちになりきるんだ。

すると、この本に書いてあることが自分の体で感じられる。書いてあることだけじゃなくて、もっと、いろんなことも想像できる。

そこなんだな。

いい作家はね、読み手に刺激を与えるんだ。そして、読み手を想像の場面に引きずり込む。

それができる作家はいい。そんな作品をいっぱい読むといい。

 

☆とてつもない想像をしよう

家にあるプリンは、だいたいお皿の上においてある。しかも、小さいお皿だ。それをじっと見てみよう。そして、プリンがどんどん大きくなるのを想像しよう。

想像するのはいつでもできる。プリンでなくてもいいんだ。

もしも、どんどん大きくなったら、どうなるかなと考える。

いろんな場面が浮かぶ。いろんなことを思いつく。それでいいんだ。それが考えるということ。

こんなことを考えたらダメだとか、こんなことを考えたらしかられる、そんな心配をするのは余計なこと。そんなふうに思っていたら、自分の意見の芽を自分で摘むことになってしまうんだ。

 

こういう作品はいくつになって読んでもいい。大人も読むといいね。そして作品を刺激にして、自分で考えることが大切だ。

「とてつもなく大きなポタージュスープ」。もしも、そんなのがあったら、きみはどうする?そこで何をする?

「もしも○○なら、どうなるか」それを想像するんだ。そうやって考えて書くだけで立派な感想文になる。

「物語を読んでどう思ったか」そんなことだけに、こだわらなくていい。作者と一緒になって想像の旅をして、それを書いたらいいんだ。

「ボクもね、こんなことを考えてみた」それでいいんだ。

作品を読んで刺激を受けて感じたこと、それに素直になったらいい。いっぱい書いていけば、きっとこの作者と同じところに立つことができる。

 

☆想像力が身を守る

気をつける。これは身を守る基本だ。

気をつけるには、荒唐無稽な想像をしないといけない。みんなは笑うかもしれない。しかし、実際に起きてからでなく、あらかじめ想像することで、身を守るんだ。

科学者や政治家には、その力が必要だね。そうしたら、地震や津波の被害も、もっとすくなかったかもしれない。

想像力が大切なんだ。「想定」なんて言葉じゃダメ。「想定外」をいっぱい想像することだ。それで身を守るんだ。

この作品が今回、課題図書にノミネートされたのは大きな意味がある。

「よーく考えてごらん。想像が人間の力だよ、そして考えるとはこういうことだよ」と伝えている。

そこを読み取ってほしい。そうすることが、今回の震災を経験したボクたちの誠実な対応だとも思える。

大きなプリンの上は大地。そして平野。そう考えたら一気にこの作品に託(たく)された「願い」に入り込んでいけるよ。

「ゆれる」とか「しずむ」とか……、この作品のあちこちに、そんな言葉がちりばめられている。「いったい、何を伝えたいのかな?」そう考えると、いろいろと見えてくるよ。

これは示唆的(しさてき)な作品だ。言いたいことをストレートに言っていない。大人たちにも読んでほしい。

 

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※出典:読書感想文書き方ドリル2001(2011年)