そして、カエルはとぶ!

そして、カエルはとぶ!

広瀬寿子・作 渡辺洋二・絵 / 国土社

赤ちゃんのときにむずかしい病気になって、入院ばっかりしていた弟の良が、うちに帰ってくることになった。ずっと良につきそっていたかあさんも、これからはうちにいるようになる――。

修平はうれしくてたまらなかった。とうさんと、かあさんと、ぼくと、良。きょうからはみんないっしょだ。

だけど、いい子のお兄ちゃん、たのもしいお兄ちゃんでいるのも、なかなかたいへんだ。良の病気はまだなおったわけじゃないから、かあさんは良の心配ばかりしているし、良はあまりしゃべらないし。これからいったいどうなるんだろう?修平の新たな生活が始まった……。

◎とっちゃまんのここに注目!

物語のあちらこちらにカエルが出てくるよね。このカエル、何を表しているんだろう。物語のエピソードそのものになっていることもあるし、修平の心を表していることもあるようだ。何か大事な意味を持っているように見える。でも、カエルにこだわりすぎなくてもいいんだけどね。

大事なことは、きみがこの物語をどう読むかということだ。きみは、この物語をどう読んだ?いろいろな読み方、切りこみ方ができる物語だから、自分なりのテーマを見つけてみよう。

・考えるポイントは?

1 良くんは病気で大変な思いをしている。だから、とうさん、かあさんの心配は、どうしても良くんのほうにばかりいってしまう。修平くんは、内心おもしろくないよね。

良、良って、弟ばっかり。ボクはどうなの?そう思う一方で、修平くんは弟のことをやさしく気づかっている。そして、心の中に重たいものがたまっていって、バクハツしてしまう……。

これが、この物語の「しん」だよね。ここをどう読むか。やはり修平くんの気持ちにそって考えてみたいところだ。

2 だれだって、トランシーバーの向こう側には、話をしてくれる相手がほしい。一方通行で返事がないのはつらい。ボクにも、「もっとこっちを向いてよ!」と叫びたいときがある。きみはどうかな。

修平くんは、兄として病気の弟のめんどうをみてやろうと思っているだけに、つらい。わかっているから、よけいつらいんだよね。

こういうけいけん、きみにはあるかな?自分自身のことをふり返ってみるのもいいかもしれないね。

3 「あなたはいい子だから」、「いい子なんだからわかるでしょ」、「お兄ちゃんなんだからこうしてね」。言われたほうは、「なんでぼくばっかり」って思いながら、がまんするしかない。こういうことってよくあるよね。だけど、がまんにもげん界があって、やがてばくはつする。そしてしかられる……。むなしさがつのるね。

このストーリーでは、両親がわかってくれて、修平くんを強くだきしめてくれたから、ほんとによかった。でも、じっさいには、わかってもらえないことのほうが多い。そういうとき、どうすればいいんだろう?きみならどうする?

4 良くんも、修平くんも、とても成長したよね。その成長のひみつは、何だと思う?どうして成長できたんだろう?とき明かしてみてほしい。修平くんの心の変化をおって、考えてみようよ。

もう一つ。カエルをとばしたラストシーンは、何を物語っているんだろう。作者はきみに、何を伝えたかったんだろう。その意味をきちんと考えてみよう。

ううん。強さとやさしさと深さを持っている作品だよな。

 

 

※上記の著作権は宮川俊彦にあります。
※無断での転用・転載を禁じます。

※出典:読書感想文おたすけブック(2003年)