ずいとん先生と化けの玉

ずいとん先生と化けの玉

むかし、ある村にずいとん先生というお医者が住んでいた。このずいとん先生、うではたしかなのだが、少しばかりずるいところがあるという、もっぱらのひょうばんだった。

トン、トン、トン……。ある秋の夜のこと、ずいとん先生の家の戸をたたくものがいる。こんな夜ふけにだれだろうと、のぞいてみると、わかい女が立っていた。子どもが重い病気にかかって苦しんでいるという。ずいとん先生は子どもをみてやることにするが、この女、じつは……。

読めば読むほど読みごたえがある、ずいとん先生とわかい女がくりひろげる、深い深~い話。

◎とっちゃまんのここに注目!

ちかごろ、どこから見ても正義の味方というような、ヒーローの存在がへってきた。悪役が主人公になっている物語も少なくない。

その意味では、読者としてのきみは、油断できないね。この話にかぎらず、いつも、何が正しいのか、どこまでがオッケーなのかということを見きわめるようにしないとね。

さて、この物語のずいとん先生、人間くさくて、かなりずるくて、どっちかと言うと「ワル」だけれど、みょうににくめない。さんざん化かされてしまうからかなあ。「ずいぶんとんまな」先生の意昧で、「ずいとん」かな。きみはこのキャラ、どう思う?

・だましあい・化かしあい

おさんぎつねのほうが、一枚上手だったね。二人の化かしあいは、相手の行動と心理を読むことによって成り立っていた。なかなかの知恵比べで、演技力も必要。この戦い、ズルイとかキタナイとか言ってられないね。

サッカーでも野球でも、相手のウラをかく手はよくある。それがレベルの高いゲームの特ちょうだ。人間関係も同じ。ちょっとした一言で相手の気持ちを動かしたり気持ちよくだまされてカをかしたり。この話、こういったテクニックがじくになっている。この点をまずチェックだ。

・ずいとん先生は自分にだまされた?

おさんは、わが子の病気を治してもらうために、かごとやしきを演出した。しかし次の朝には正体をばらしている。これは誠実。しかし、ずいとん先生は欲ばりだった。母親の弱みにつけこみ、化けの玉をだましとってしまった。これはひどいよな。そして、しかえしが始まった。

こっけいさはずいとん先生のがわにあったね。おさんは冷静。先生は、空回りして、自分の知恵におぼれてしまったように見える。最後の場面なんて、笑っていられない。ずいとん先生、自分で自分のはかをほっているという感じだもの。まるで自分自身にだまされているようだった。

本には、それで先生がこりたとも、その後二人はなかよくなったとも書いていない。そこがいい。きみは、どう思った?痛快だったかな。それとも何か苦いものを感じたかな。このあたり、感想文のポイントになるよ。

・人と人との関係 

この話、人と人の話なんだよね。人と人との関係を語っている。どんなことを?これ、考えてみよう。ボクは、人と人との関係は、鏡だと思う。誠実は誠実をうつすし、うそはうそをうつす……。

さてさて、最後にもうひとつ、重要ポイントをあげておこう。「化けの玉」ってなんなんだ?「化けの玉」の正体をあばけ!これがこの本の最終ハードルだ。きみの感想文のテーマにしてごらん。感想文名人の化けの皮、はがれないようにね。ふふふ。

 

 

※上記の著作権は宮川俊彦にあります。
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※出典:読書感想文おたすけブック(2004年)

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ずいとん先生と化けの玉

那須正幹・文 長谷川義史・絵 / 童心社