あきらめないこと、それが冒険だ エベレストに登るのも冒険、ゴミ拾いも冒険!

あきらめないこと、それが冒険だ―エベレストに登るのも冒険、ゴミ拾いも冒険!

野口健・著 / 学習研究社

一九九九年、五月。アルピニストの野口健さんは、地球で最も高い場所、八八四八メートルの頂に登った。三度目の挑戦で、エベレスト登山に成功したのだ。同時に、世界七大陸最高峰登頂の最年少記録を達成。この時二十五歳だった。

しかし、野口さんの挑戦はそれだけでは終わらない。エベレストに大量のゴミが捨てられていることを知ると、世界初の「エベレスト清掃登山」を発表。それは、「地球を守る」という新たな冒険の始まりだった。

なぜ命がけの冒険にいどむのか?冒険とは?「生きる」とは――?自らの行動を通して、ボクらにさまざまなことを問いかけ、前に進む勇気をくれる、感動ノンフィクション。

◎とっちゃまんのここに注目!

作者はアルピニスト。だけど、この人の生き方には、アルピニストという肩書きの枠をはるかにこえたものがありそうだ。この本を読んで、その一端をかいま見ることができたような気がする。

なぜ山に登るのか?「そこに山があるからだ」という名言もあったよね。この問いに、作者ならどう答えるだろうかと考えてみる。「行くしかないからさ!」「山がぼくの進む先なんだ」……。

きみもやってみるといいよ。感想文の核心になると思う。

・作者を読解しよう!

生い立ちや少年時代のストーリーから、作者はどんな人なのかつかんでみよう。アルピニストの野口健ではなく、人間・野口健を読解するんだ。

まず、本人が何度も語っている「落ちこぼれ」という言葉に注目。何からの「落ちこぼれ」なのか、考えてみたいところ。野口健は、落ちこぼれたから世界的なアルピニストになったのだろうか?そうではないよね。

母との別れ、父との二人暮らし、世界を転々とする暮らし。さびしさの中で、「自分」が見えたのだろうか?孤独や、周囲の人の理解が得られない厳しい環境が、人をしっかりさせることもある――こんな見方もできると思う。

・究極の場面から何を読む?

心に残る場面がある。

エベレストの山頂近くに死体が転がっている。そこまでたどり着きながら死んだ人の死体が、凍てついたまま放置されている。

一瞬の判断が生死を分ける。前に進むか、中止するか、決めるのは自分しかいない。そして成功したときには、動物のように雄叫びをあげる……。

ボクはこの場面に、作者の強い意志と「生きる」ことへの決意のすさまじさを感じた。こういう印象的な場面を取り出して、そこに表現されているものをとらえることができたら最高だね。

・環境問題について

環境問題も重要なテーマの一つ。エベレストのゴミの話、富士山のゴミの話、活動への非難や圧力、日本のマナーは三流だという話……。日本人の生き方へのするどい批判にもなっていたね。

地球環境、自然、人間、日本という国……作者の言葉を切り口に、きみらしい意見を構築してみるといい。

・冒険とは何だろう?

作者は、なぜ最高峰登頂を目指したのだろう?どうして困難な冒険を成功させることができたのだろう?

ボクには、作者の生き方そのものが冒険に思える。いや、作者だけではない。

作者の両親も、冒険家なのかもしれない。もっと言うなら、一度しかない人生を自分らしく生きていこうという人たちは、みな冒険家なんだ。

きみは冒険しているか?きみにとっての冒険は何だろう?きみが向かう山はどこにある?そんなことを考えながら、感想文に向かってみよう。

 

 

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※出典:読書感想文おたすけブック(2007年)