花(はな)になった子(こ)どもたち

花(はな)になった子(こ)どもたち

ジャネット・テーラー・ライル・作  市川里美・絵 多賀京子・訳 / 福音館書店

オリヴィアは九才(きゅうさい)、妹(いもうと)のネリーは五才(ごさい)。春(はる)が来(く)る前(まえ)に母(かあ)さんをなくした二人(ふたり)は、夏(なつ)の間(あいだ)、年取(としと)ったミンティーおばさんの家(いえ)にあずけられることになりました。

ミンティーおばさんの家(いえ)には、大(おお)きな庭(にわ)がありました。おばさんは昔(むかし)、名(な)を知(し)られた園芸家(えんげいか)だったそうですが、今(いま)では庭(にわ)はすっかりあれ果(は)てています。この古(ふる)い庭(にわ)から、ある日(ひ)、あるものが見(み)つかります。それから間(ま)もなく、今度(こんど)は家(いえ)の中(なか)からある本(ほん)が見(み)つかって……。

古(ふる)い庭(にわ)から出(で)てきたものには、「理由(りゆう)がある」とおばさんは言(い)います。おばさんの庭(にわ)には、何(なに)か不思議(ふしぎ)な物語(ものがたり)がかくされているようなのです……。

 

◎とっちゃまんのここに注目(ちゅうもく)

読(よ)みごたえがある作品(さくひん)だね。あつみがあって、訳(やく)もすてきだ。ファンタジーとげん実(じつ)の間(あいだ)を行(い)き来(き)するような物語(ものがたり)。だけど、げん実(じつ)がしっかりとえがかれていて、げん実(じつ)の世界(せかい)にこそ、妖精(ようせい)がいて、魔法(まほう)がある――そんな思(おも)いをいだかせてくれる。

物語(ものがたり)の中(なか)の物語(ものがたり)もおもしろかったね!ボクは二重(にじゅう)に引(ひ)きこまれて、物語(ものがたり)の中(なか)に入(はい)りこんでしまった。何重(なんじゅう)にも魔法(まほう)の粉(こな)をふりかけられたようだ。「花(はな)になった子(こ)どもたち」、このタイトルも、作者(さくしゃ)からのメッセージ。しっかり読(よ)みといてごらん。タイトルは本(ほん)の「第一行目(だいいちぎょうめ)」なんだよ!

 

・キーワードは『庭(にわ)

古(ふる)い庭(にわ)には、いろいろなものがうまっているという。すっかりわすれているものもあれば、物語(ものがたり)や伝説(でんせつ)もある。それが、何年(なんねん)もたってからとつぜん表(おもて)へ出(で)てくる。まるで、人(ひと)の記(き)おくや思(おも)い出(で)みたいだね。

オリヴィアとネリーは、いっしょうけんめい庭(にわ)をほりかえしている。心(こころ)をたがやすように。生(い)きることそのものみたいに。

ボクには、おばさんの庭(にわ)は、つらいげん実(じつ)に見(み)まわれた二人(ふたり)が生(い)きていく世界(せかい)そのもののように思(おも)えた。

きみも、作者(さくしゃ)が庭(にわ)にこめた意味(いみ)や思(おも)いをさぐってごらん。

・花(はな)とオリヴィアとネリーと

種(たね)が芽(め)を出(だ)して育(そだ)ち、花開(はなひら)いて散(ち)り、また芽(め)を出(だ)す。種(たね)も球根(きゅうこん)も、じょうけんが整(ととの)わなければ芽(め)を出(だ)さない。植物(しょくぶつ)って、すごい生(い)き物(もの)だね。

そして、ボクは思(おも)う――人(ひと)も、種(たね)で、つぼみで、花(はな)なんだ。オリヴィアはつぼみで、ネリーは小(ちい)さな芽(め)。二人(ふたり)は自分(じぶん)の心(こころ)をたがやしながら、花(はな)をさかせていくんだ。風(かぜ)にあおられたり、お日(ひ)様(さま)になぐさめられたりしながらね。きみは、どう思(おも)う?

二人(ふたり)の心(こころ)の動(うご)きを追(お)ってみよう。どこで何(なに)があって、どうなっていったか。メモを作(つく)って、感想(かんそう)文(ぶん)にまとめるといいよ。

もちろん、感想(かんそう)が「二人(ふたり)は成長(せいちょう)しました」で終(お)わりじゃさみしい。物語(ものがたり)を通(とお)して、きみが何(なに)をどう考(かんが)えたかが重要(じゅうよう)だよ。

 

・魔法(まほう)はとける?

「魔法(まほう)」にも注目(ちゅうもく)したい。自分(じぶん)で自分(じぶん)に魔法(まほう)をかける、そして、とく。自分(じぶん)を作(つく)るって、そういうことかもしれないよね。

じつは、<姿(すがた)変(が)えの呪(のろ)い>も、<とりけしの魔法(まほう)>も、自分(じぶん)でといたりかけたりできるんじゃないかな?そんなふうに考(かんが)えたとき、ボクらはこの物語(ものがたり)の深(ふか)みに入(はい)っていく。そして、自分(じぶん)に近(ちか)づいていく。

本(ほん)を読(よ)むということは、自分(じぶん)を読(よ)むことでもある。じっくりと本(ほん)に入(はい)りこんで、テーマを見(み)つけてごらん。きみも自分(じぶん)の「庭(にわ)」をたがやそう!

 

 

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※出典:読書感想文おたすけブック2008年度版