3年(ねん)2組(くみ)は牛(うし)を飼(か)います

3年2組は牛を飼います

木村セツ子・作 相沢るつ子・絵 / 文研出版

 

まゆの通(かよ)っているつばな台(だい)小学校(しょうがっこう)では、全学年(ぜんがくねん)の全(ぜん)クラスで生(い)き物(もの)を育(そだ)てることになっています。まい年(とし)四月(しがつ)には、みんなで話(はな)し合(あ)って何(なに)を育(そだ)てるか決(き)めるのですが、今年(ことし)の三年(さんねん)二組(にくみ)は大(おお)もめにもめ、まだ意見(いけん)がまとまりません。

そんな時(とき)、いたずらっ子(こ)のナオヤが子牛(こうし)を飼(か)おうと言(い)い出(だ)しました。

「牛(うし)はだめ。いいか、牛(うし)はペットじゃないそ」

先生(せんせい)は大(おお)あわて、動物(どうぶつ)が苦手(にがて)なまゆも、内心(ないしん)どきどきです。でも、ナオヤもみんなもしんけんで……。

そもそも、小学(しょうがく)三年生(さんねんせい)に子牛(こうし)の世話(せわ)なんてできるのでしょうかー!?

 

◎とっちゃまんのここに注目(ちゅうもく)

ストーリーの中心(ちゅうしん)は、子牛(こうし)の世話(せわ)をめぐる三年(さんねん)二組(にくみ)のドラマ。だから、みんなの目(め)は、まゆやナオヤ、ミキちゃん、クラスのみんなのところに行(い)くよね。

もちろんそれでオーケーだけれど、そうすると、感想(かんそう)文(ぶん)がまとまりにくくなることもあるかもしれない。

そこで、大(だい)ヒント。感想(かんそう)文(ぶん)を書(か)くときは、「生(い)き物(もの)を飼(か)う」ってどういうことか、「命(いのち)」って何(なに)か、追求(ついきゅう)してみよう。

それから、子牛(こうし)のクルミちゃんに光(ひかり)を当(あ)てるのをわすれずにね。クルミちゃんは、物語(ものがたり)のカギをにぎるもうひとり(一頭(いっとう)だね)の主人公(しゅじんこう)。クルミちゃんが教(おし)えてくれることがたくさんあるはずだよ。

・登場(とうじょう)人物(じんぶつ)を読(よ)

登場(とうじょう)人物(じんぶつ)の心(こころ)を読(よ)むのは、感想(かんそう)文(ぶん)の王道(おうどう)。だけど、人(ひと)の心(こころ)はどんどん変(へん)

化(か)するから、これがなかなかどうしてフクザツで、うまくいかない。

ポイントは、的(まと)をしぼること。まず、まゆの心(こころ)の変化(へんか)を追(お)ってみよう。

「はじめはこうだったけど、こうなった」というようにとらえるといいよ。

ナオヤは、キャラ(せいかく)をつかむといいな……ナオヤ、いいやつだよね!それから、ミキちゃんの心(こころ)もちょっとのぞいてみようか。

こんなふうに、ひとりひとりを分(わ)けて考(かんが)えると、自分(じぶん)の感想(かんそう)や書(か)きたいことが見(み)えてくる。人物(じんぶつ)の関係図(かんけいず)や、年表(ねんぴょう)のような表(ひょう)を作(つく)ってみてもいい。そうすると、物語(ものがたり)の流(なが)れや山場(やまば)もつかみやすくなるよ。

 

・『飼(か)う』ってどういうこと?

人物(じんぶつ)や物語(ものがたり)全体(ぜんたい)についてざっくりつかんだら、いよいよ本題(ほんだい)。きみは生(い)き物(もの)の世話(せわ)をすることについて、どう思(おも)った?

三年(さんねん)二組(にくみ)のみんなは、クルミちゃんを「飼(か)う」という目的(もくてき)のために学校(がっこう)に連(つ)れてきたのだから、「くさいからいや」「きたないからさわりたくない」ではすまないよね。いやになったからといって、とちゅうで投(な)げ出(だ)すわけにもいかない。クルミちゃんの命(いのち)にせきにんがあるのだから。

そう、「飼(か)う」って、せきにんを持(も)って生(い)き物(もの)の命(いのち)を育(そだ)てることなんだ。

これが、かんじんかなめのところ。

「生(い)き物(もの)にはにおいがあるけど、それは生(い)きているあかしだ」とか、「動物(どうぶつ)には心(こころ)が通(つう)じる」とか、そんな感想(かんそう)が出(で)てくるといいな。

 

・学校(がっこう)で牛(うし)を飼(か)ったら?

ところでボクは、学校(がっこう)で牛(うし)を飼(か)うことに大(だい)さん成(せい)。牛(ぎゅう)にゅうをしぼったり、チーズやバターを作って売(う)ったり。育(そだ)てて、食(た)べて、売(う)ったら、最高(さいこう)の勉強(べんきょう)になる。都会(とかい)のど真(ま)ん中(なか)でも飼(か)うといいんだ。だけど本当(ほんとう)に飼(か)ったら、「くさい」と言(い)われて大(おお)さわぎになるんだろうね――じつはここには、もう一(ひと)つの問題(もんだい)がかくれている。都会(とかい)で牛(うし)を飼(か)うと、なぜ問題(もんだい)になるのだろうか?そこにもう一(ひと)つかくれたテーマが横(よこ)たわってるね。

※上記の著作権は宮川俊彦にあります。
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※出典:読書感想文おたすけブック(2008年)

※出典:読書感想文おたすけブック2008年度版